現在はタクシー事業者が運行管理する「日本版ライドシェア」と、非営利目的で自治体やNPOなどが実施する「公共ライドシェア」の2種類が認められている。タクシーを補完する制度との考えから、稼働できる地域や時間帯、台数などにも制限がある。岸田政権は6月、期限を設けずに全面解禁の在り方を議論するとの方針を決めており、今後の判断は次期政権に委ねられている。
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一般ドライバーが自家用車などで利用客を運ぶ有料サービス。もともと自動車や自転車の相乗りを意味したが、情報技術(IT)の普及で、自動車の所有者・運転者と自動車に乗りたい利用者を効率よく結びつけるサービスとして世界的に普及した。利用希望者がスマートフォン(スマホ)などのアプリケーション(アプリ)を通じて配車を依頼すると、スマホ端末のGPS(全地球測位システム)機能を通じて現在位置が発信され、近くを走っているライドシェア提供ドライバーを呼び出し、有料で運んでもらう仕組みである。迅速・手軽に自動車を利用できるうえ、一般ドライバーにとっては、あいた時間などで金銭を稼ぐことができる。スマホで行き先指定や電子決済ができるため、ことばの通じない外国人でも利用しやすい。使っていない車や家などの資産を、インターネットを介して必要な人に使ってもらうシェアリング・エコノミー(共有型経済)の一形態でもある。
自動車のライドシェアは、2010年にアメリカのウーバー・テクノロジーズ社(Uber Technologies,Inc.)がサービスを開始し、世界約70か国・地域でライドシェアを提供。中国の滴滴出行(ディディ、Didi Chuxing Technology Co.,Ltd.)、シンガポールのグラブ(Grab Holdeings Ltd.)などライドシェアを国際的に提供する事業者が相次いで生まれた。調査会社グローバルインフォメーションは世界のライドシェア市場が2024年に476億ドルの規模に達し、2029年まで年率10%超の成長を続けると試算している。北・中米、中国、東南アジアの一部などは、ドライバーや運行の管理をライドシェア事業者が担って国は関与しないTNC(Transportation Network Company)方式をとり、ヨーロッパ各国は事業者に各種の業務を課すとともに、ドライバーにライドシェア免許の取得や登録などを義務づけるPHV(Private Hire Vehicle)方式をとっている。
日本では、一般ドライバーによるライドシェアは道路運送法の「白タク行為(白ナンバー自動車による無許可タクシー営業)」にあたるとして原則禁止してきたが、2006年(平成18)、過疎地の住民の足を確保する目的で、交通空白地有償運送制度として解禁。2024年(令和6)には、深刻なタクシーの運転手不足を補うため、東京、神奈川、愛知、京都などの都府県内の都市部や観光地で、地域・時間帯限定で日本版ライドシェアを開始した。日本版は既存タクシー会社が運営主体となり、運賃もタクシーと同等にするなど、ライドシェアの部分解禁ととらえることができる。政府はタクシー会社以外が運営し、需給に応じて運賃を決める全面解禁を検討している。
[矢野 武 2024年7月18日]
(2015-3-16)
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