ラポルテの規則(読み)ラポルテノキソク

化学辞典 第2版 「ラポルテの規則」の解説

ラポルテの規則
ラポルテノキソク
Laporté's rule

原子スペクトルにおける近似的な選択則の一つ.原子が光の吸収または放出によって遷移する場合,その遷移が電気的双極子によるときは,奇の性質を有する状態(奇項)と,偶の性質を有する状態(偶項)との間でのみ起こるという規則.原子の電子構造が1電子近似で表されるとき,原子の状態(波動関数)は,各電子の軌道角運動量li総和Σ li が,偶数であるか奇数であるかによって偶項と奇項とに分類される(偶奇性).したがって,偶奇性によれば,Σ li変化が奇数になる状態間でのみ光の吸収または放出が可能である,ということになる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラポルテの規則」の意味・わかりやすい解説

ラポルテの規則
ラポルテのきそく
Laporté's rule

原子内の電子の転移に伴う光の放射・吸収に関して近似的に成り立つ選択規則。各電子の方位量子数の和 Σli は,電気双極放射または吸収に際して奇数だけ変化する。すなわちパリティが変化する。この規則があるため,Σli が奇数か偶数かによって原子スペクトル項を奇項と偶項とに分類することが行われている。

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世界大百科事典(旧版)内のラポルテの規則の言及

【選択則】より

…この事実は20世紀初頭から経験的に知られていたが,量子論においては光の放出(または吸収)の起こる条件はそれに関与する二つの状態の量子数を使って次のように定式化される。(1)二つの状態は反対のパリティをもつ,すなわち,一方が偶状態で,他方が奇状態である(ラポルテの規則),(2)原子の全角運動量の量子数をJとするとき,Jの二つの状態間の差⊿Jが⊿J=0,±1を満たす(ただし0↔0の遷移を除く),(3)Jの任意の方向への射影Mについて二つの状態間の差⊿Mが⊿M=0,±1,(4)原子の軌道角運動量の量子数Lについては,⊿L=0,±1(ただし0↔0を除く),(5)スピン角運動量の量子数Sについて⊿S=0,の五つである(このうち,(4),(5)は角運動量の結合のしかたによっては成り立たないこともある)。 選択則は主となる物理系(非摂動系という)を乱す相互作用(摂動)があるとき,前者の二つの定常状態間の遷移確率,したがって摂動の行列要素が0にならないための条件を述べたものである。…

【パリティ】より


[量子力学におけるパリティ]
 もともとパリティという概念は,量子力学において,原子のある準位の波動関数Ψ(r1r2,……,rn)の空間反転Pに対する変換性, PΨ(r1,……,rn)=Ψ(-r1,……,-rn)  =±Ψ(r1,……,rn)を示すために,アメリカのウィグナーEugene Paul Wigner(1902‐95)が導入したもので,各粒子の軌道角運動量をħ(プランク定数を2πで割ったもの)を単位としてl1,l2,……とすると,パリティはとなる。ドイツのラポルテOtto Laporteは原子からの電気二極放射に際し,liが奇数だけ変化するという規則を見いだしていたが(ラポルテの規則),これを用いれば原子の準位をパリティによって分類することができる。他方,物理量に対応する演算子のパリティは古典力学と同様に定義される。…

※「ラポルテの規則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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