シラン

デジタル大辞泉 「シラン」の意味・読み・例文・類語

シラン(silane)

珪素けいそ水素化物の総称。一般式SinH2n+2で表され、モノシランジシラン・トリシラン・テトラシランなどがある。ふつうはモノシランをさし、悪臭をもつ無色の気体で有毒、空気中で自然発火する。半導体用の高純度珪素の製造原料。珪化水素水素化珪素シランガス

しら‐ん

[連語]《動詞「し(知)る」の未然形に打消しの助動詞「ず」の連体形の付いた「しらぬ」の音変化。終助詞的に用いる》疑問語に呼応して、疑問の意を表す。→かしらん
川岸かしの問屋へ仕切を取りに出る筈だが、なぜねえ―」〈滑・浮世風呂・三〉

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精選版 日本国語大辞典 「シラン」の意味・読み・例文・類語

しら‐ん

  1. 〘 連語 〙 ( 「知らぬ」が文末にあって、終助詞のように用いられたもの )
  2. 助詞「か」の下に付いて、話し手の疑いの気持を表わす。→かしらん
  3. 疑問を表わす語を受けて、話し手の疑いの気持を表わす。
    1. [初出の実例]「なぜおれを見て、見ない顔していくしらん」(出典:洒落本・遊子方言(1770)発端)

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化学辞典 第2版 「シラン」の解説

シラン
シラン
silane

狭義では,SiH4のことをいう.ケイ素数2以上のものと区別するにはモノシランともいう.飽和炭化水素に相当するSinH2n+2全体をさすこともある.n = 2~4のものは単離されているが,それよりnの大きいものの存在も知られている.ただし,炭化水素よりずっと不安定である.また,これらのHをアルキル基アリール基などに置換したオルガノシランも,シランということがある.【】SiH4(32.12).二酸化ケイ素水素化アルミニウムリチウムLiAlH4を加え,150~170 ℃ に加熱するか,四塩化ケイ素SiCl4をLiAlH4で還元すると得られる.大規模には,SiO2にアルミナAl2O3を加え,高温・高圧化で水素還元してつくる.不快臭のある気体.密度0.68 g cm-3(-185 ℃,液体).融点-185 ℃,沸点-112 ℃.室温では安定である.300 ℃ 付近から分解がはじまる.分解は光で促進される.400 ℃ で完全にSiと H2 に分解する.空気中で高温では発火する.Cl2 とまぜると爆発的に反応してSiCl4を生じる.水で徐々に加水分解する.アルコール類,エーテル,CHCl3などに不溶.還元性があり,CuSO4をCu2Siに,AgNO3をAgに還元する.高純度のケイ素製造の原料となる.[CAS 7803-62-5]【】SinH2n+2(n ≧ 2).ケイ化マグネシウムMg2Siなどの金属ケイ化物に塩酸を作用させると生じるシラン混合物を分留して,各nの化合物を得る.なお,n ≧ 2のもの(ジシランSi2H6)は,SiH4 と H2との混合気体の光化学反応でも生じる.n = 3:トリシランSi3H8.密度0.73 g cm-3.融点-117 ℃,沸点53 ℃.n = 4:テトラシランSi4O10.密度0.79 g cm-3.融点-84 ℃,沸点107 ℃.いずれも,CS2ベンゼンなどに可溶.モノシランやジシランより不安定で,空気中で酸化され,爆発することもある.ハロゲン気体や,CCl4などの含ハロゲン溶媒ともはげしく反応してSiCl4になる.【】シランのHをアルキル基またはアリール基で置換したオルガノシランは,【】,【】の水素化物よりずっと安定である.R4Siは,SiCl4グリニャール試薬(RMgX),LiRなどを反応させると得られる.テトラメチルシラン(TMS)(CH3)4SiはNMRの基準に用いられる.ポリ(オルガノシラン)はSi-Si間が光で切断されるので,電子部品や光機能材としても注目されている.


は,400 ℃ 近くでポリカルボシラン


にかわる.これを1000 ℃ 近くに加熱すると,炭化ケイ素になる.

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改訂新版 世界大百科事典 「シラン」の意味・わかりやすい解説

シラン
silane

SinH2n+2の組成をもつ水素化ケイ素silicon hydrideの総称。狭義にはモノシランSiH4を指す。水素化ケイ素はケイ化マグネシウムMg2Siあるいは亜鉛やリチウムのケイ化物に酸を作用させると得られ,モノシラン,ジシランSi2H6,トリシランSi3H8,テトラシランSi4H10などが得られる。ペンタシランSi5H12,ヘキサシランSi6H14の生成も知られているが,まだ単離されていない。シランはメタン系炭化水素の炭素をケイ素で置き換えた形のもので,物理的性質は炭化水素に似るが,化学的性質は異なり,気体はきわめて有毒である。ジシラン以上の高級シランはアルコール,ベンゼンなどに可溶で,空気中で自然発火する。ハロゲンを作用させるとハロゲノシランとなる。

シリコメタン,シリカンなどとも呼ばれる。ケイ化マグネシウムやケイ化亜鉛と酸との反応によりジシラン,トリシランなどとともに得られる。無色の強い刺激臭のある気体。塩素とは激しく反応してテトラクロロシランとなるが,水とはあまり反応せず徐々に分解する。アルカリ水溶液中ではメタケイ酸塩と水素に分解する。アルコール,ベンゼン,エーテル,クロロホルム,四塩化ケイ素などには不溶。空気中で熱すると燃えて二酸化ケイ素と水になる。半導体用高純度ケイ素の製造原料やケイ素で表面処理する場合に用いられる。
執筆者:



シラン
Diego Silang
生没年:1730-63

スペインのフィリピン支配に抗した民族的英雄。フィリピンの主都マニラは,ヨーロッパで起きた七年戦争の余波で,1762年10月から64年5月までイギリスに占領された。長年スペイン支配に苦しんできたフィリピン人は,この事件を契機に各地でスペイン支配を打破する反乱を起こした。その中で最大のものは,ルソン島中西部パンガシナン地方での反乱(1762-64)とルソン島北西部イロコス地方での蜂起で,シランは後者の反乱の指導者であった。彼はルソン島中西部ラ・ウニオン州のプリンシパリーア(長老層)の家の出であったが,幼くして孤児となり,イロコス地方ビガン市の教区司祭のもとで成長した。したがってスペイン語をよくし,またビガン~マニラ間の郵便物運搬の職についたので,他地方の動きやニュースに通じていた。最初はトリブート(貢税)に苦しむ民衆の窮状とプリンシパリーアの体制不満を結合して,イロコス地方のスペイン当局に体制改革を迫ったが拒否され,1762年12月,実力でビガンからスペイン人支配者を一掃し,自ら率いる独立政府を樹立した。しかし63年5月,スペイン当局のまわし者によって暗殺され,独立政府もまもなく解体した。
執筆者:


シラン (紫蘭)
Blettilla striata (Thunb.) Reichb.f.

庭に植えられる地生のラン科植物。紫紅色の花色より,和名がつけられた。地下に偽球茎があり,古い偽球茎と連なる。茎は高さ30~70cm,3~5枚の葉を互生する。葉は長さ20~30cm,幅2~5cmくらいで,縦じわが目だつ。5~6月,茎の先に紫紅色の花を数個まばらにつける。花はやや大きく,径約5cm,側花弁は平開する。唇弁は内側に巻き,筒状,蕊柱(ずいちゆう)を取り巻き,縦ひだがある。距はない。花粉塊は粉質で8個。関東以西の西日本,朝鮮,中国,台湾に分布する。低山帯のやや湿った草地や林縁を好むが,野生品はまれにしか見られない。観賞のため栽培されるが,また偽球茎は白及(びやくきゆう)と呼ばれ,多量の粘液を含んでいるので,漢方薬,民間薬として,止血,痛止め,慢性胃炎に用いられる。

 東アジア特産で9種ほど知られているシラン属Blettillaは粉質の花粉塊をもつことで,熱帯アメリカに分布する近縁のBletia属と区別される。
執筆者:

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普及版 字通 「シラン」の読み・字形・画数・意味

蘭】しらん

よろいぐさ。香草。〔広雅、釈天〕天子は祭るに鬯(ちやう)を以てし、侯はを以てし、大夫はを以てし、士はを以てし、庶人はを以てす。

字通「」の項目を見る


蘭】しらん

香草。と蘭。〔子、宥坐〕は深林に生ずるも、人無きを以てしからざるに非ず。君子の學は、ずる爲にするに非ざるなり。

字通「」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シラン」の意味・わかりやすい解説

シラン(ケイ素の水素化物)
しらん
silane

ケイ素の水素化物の総称。一般式SinH2n+2で示される。nが1、2は無色の気体、3、4は液体である。一般にシランというときはモノシランSiH4をさすことが多い。Si2H6はジシラン、Si3H8はトリシラン、Si4H10はテトラシランなどのようにいう。液体アンモニア中でケイ化マグネシウムに臭化アンモニウムを作用させて得られる。あるいは塩化ケイ素をテトラヒドリドアルミン酸リチウムで還元しても得られる。古くはケイ化マグネシウムを酸で処理して得ていた。反応性が高く空気に触れると燃える。希酸溶液に安定であるが、アルカリ性で速やかに加水分解する。モノシランはケイ素の表面処理用に、また半導体用の高純度ケイ素の製造原料にも使用される。

[守永健一・中原勝儼]


シラン(データノート)
しらんでーたのーと

シラン
モノシラン
 化学式 SiH4
 融点  -185℃
 沸点  -111.8℃
 比重  0.680(-185℃)
ジシラン
 化学式 Si2H6
 融点  -132.5℃
 沸点  -14.5℃
 比重  0.686(-25℃)
トリシラン
 化学式 Si3H8
 融点  -117.4℃
 沸点  52.9℃
 比重  0.725(0℃)
テトラシラン
 化学式 Si4H10
 融点  -93.5℃
 沸点  109℃
 比重  0.79(0℃)


シラン(紫蘭)
しらん / 紫蘭
[学] Bletilla striata (Thunb.) Reichb.fil.

ラン科(APG分類:ラン科)の多年草。偽鱗茎(ぎりんけい)があり、エビネ状に連なる。葉は4、5枚互生し、長楕円(ちょうだえん)形、長さ20~30センチメートル、幅2~5センチメートル、縦じわが目だつ。葉の間から高さ30~70センチメートルの花茎を出し、5~6月、紅紫色の花を数個まばらに開く。側花弁は平開し、径約5センチメートルで目だつ。唇弁は内側に巻いて筒状となり、5条の縦ひだがある。距(きょ)はない。低山のやや湿った草地や林縁に生え、関東地方以西の本州から九州、および朝鮮半島、中国に分布する。偽鱗茎は漢方で止血、痛み止めに用いる。名は花色に基づく。

 シラン属は粉質の花粉塊があり、葉が基部で関節し、花序は頂生するなどの特徴がある。東アジアに9種分布する。

[井上 健 2019年5月21日]

 園芸品種としては、白色花のシロバナシラン、葉の縁に白色の覆輪斑(ふ)があるフクリンシランがある。また、サワラン、ナリヤランなどとの交雑種も作出されている。性質は強健で育てやすく、地被植物として利用される。繁殖は3~4月または10月、株分けで行う。腐植質壌土がよい。

[猪股正夫 2019年5月21日]


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百科事典マイペディア 「シラン」の意味・わかりやすい解説

シラン

ケイ化水素Si(/n)H2(/n)(/+)2の総称。ケイ化マグネシウムMg2Siに酸を作用させると発生する。モノシランSiH4,ジシランSi2H6,トリシランSi3H8,テトラシランSi4H1(/0)などがある。常温で無色の気体ないし液体で,悪臭があり,有毒。ふつうシランというときは,モノシランSiH4をさすことが多く,シリコン半導体製造の原料として重要。
→関連項目シリコーンゴム

シラン

中部地方〜沖縄,中国の山中に自生しまた庭園にも植えられるラン科の多年草。基部には卵球形の偽球茎がある。葉は楕円形で長さ20〜40cm。5〜6月,高さ30〜70cmの花茎の先に,径約3cmの紅紫色の花を数個まばらにつける。唇弁(しんべん)は少し内に巻く。偽球茎を白及(びゃくぎゅう)といい薬用とし,また糊(のり)とする。紫蘭の名は花色に基づく。
→関連項目ラン(蘭)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シラン」の意味・わかりやすい解説

シラン
silane

(1) 水素化ケイ素の総称。炭素をケイ素に置き換えた形の有機ケイ素化合物のこと。一般式 SinH2n+2 である。ケイ化マグネシウムに酸を作用させてつくる。 (2) 単にモノシラン SiH4 をさすこともある。無色の悪臭をもつ気体。沸点-112℃。爆発性があり危険,温めるか減圧すると発火する。塩素と激しく反応する。高純度アモルファスシリコンの製造に用いられる。

シラン(紫蘭)
シラン
Bletilla striata

ラン科の多年草。日本の中南部から,沖縄や中国の暖帯にかけて分布する。湿原や崖などによくみられる。地下に多肉の球茎がある。葉は長楕円形で縦皺があり,葉柄は鞘となって茎をいだき,茎の基部に5~6枚が集まってつく。5月頃に,1本の花茎が伸長し3~7個の花をつける。花は白色,桃色,紫紅色で美しい。ラン科の植物で畑土で栽培できるものはごく少ないが,シランは観賞用として比較的容易に植えることが可能である。

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世界大百科事典(旧版)内のシランの言及

【集積回路】より

…(2)化学的膜形成chemical vapor deposition(略してCVD) 原料元素を含む気体化合物を特定の温度に保ったウェーハー周囲に流し,化学変化によってウェーハー上で微粒子状の固体物質を析出,沈着させ,堆積により膜を形成する方法である。通常はシランガスSiH4を原料とし,多結晶シリコン膜の場合には分解で,シリコン酸化膜の場合には酸素との反応で,またシリコン窒化膜の場合にはアンモニアガスとの反応により析出させる。最近は低い反応温度で膜形成を行う方法が開発され,ガス放電や紫外線で反応を促進させるプラズマCVDや光CVDが実用化されつつある。…

※「シラン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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