リンゼー(読み)りんぜー(英語表記)Alexander Dunlop Lindsay

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リンゼー」の意味・わかりやすい解説

リンゼー(Alexander Dunlop Lindsay)
りんぜー
Alexander Dunlop Lindsay
(1879―1952)

スコットランド生まれのイギリス政治哲学者。オックスフォードのベリオル・カレッジの学長、オックスフォードの副総長、さらにノーススタッフォードシャー(後のキール)大学の初代学長などを歴任、イギリス労働組合会議、労働党への貢献を認められて男爵位を授与される。その思想家としての姿勢はオックスフォードの理想主義哲学者T・H・グリーン、教育者としてのそれはベリオルの先任学長ベンジャミン・ジョウエットBenjamin Jowett(1817―1893)に多く影響された。政治や市民的義務を考える場合に、哲学のみならず宗教信仰にも基礎を求め、大学礼拝堂で説教し、キリスト教を現代に生かす努力をした。

 著作には、プラトンの『国家』の翻訳をはじめ、ベルクソンカントに関するものもあるが、とりわけ、自由と民主主義の本質を解明しようとしたものが有名である。民主主義の政治思想の系譜をとくにピューリタニズムの運動のなかでクロムウェルの軍隊でもたれた自由な政治討議に求める『民主主義の本質』(1929)、第二次世界大戦中に民主主義の信念をBBC放送局から訴えた『私は民主主義を信ずる』(1940)、そして同じく第二次世界大戦中から手がけた代表作『近代民主主義国家』の第1巻は1943年に刊行されたが、その続巻はついに世に出なかった。

[飯坂良明]

『永岡薫訳『民主主義の本質――イギリス・デモクラシーとピュウリタニズム』(1964/1992・未来社)』『永岡薫・山本俊樹・佐野正子訳『わたしはデモクラシーを信じる』(2001・聖学院大学出版会)』


リンゼー(Nicholas Vachel Lindsay)
りんぜー
Nicholas Vachel Lindsay
(1879―1931)

アメリカの詩人。中西部イリノイ州の出身。シカゴニューヨークで美術を学ぶ。シカゴの新しい詩誌『ポエトリ』に『ブース将軍、天国に入る』(1913)を発表し、その力強い詩風で注目を浴びた。1912年「美の福音(ふくいん)」の朗読講演を各地で始め、素朴かつ流麗、原始的な呪誦(じゅしょう)の響きが民衆の想像力をとらえ、一躍時代の寵児(ちょうじ)となった。イギリスにもしばしば招かれて朗読会を行った。代表的詩集『コンゴ川その他の詩』(1914)や、選詩集『ダニエル・ジャズ』(1920)がある。1931年、故郷で借財と敗北感に責めさいなまれ自殺。

[新倉俊一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リンゼー」の意味・わかりやすい解説

リンゼー
Lindsay, (Nicholas) Vachel

[生]1879.11.10. イリノイ,スプリングフィールド
[没]1931.12.5. イリノイ,スプリングフィールド
アメリカの詩人。シカゴ,ニューヨークなどで美術を研究しつつ詩作に励み,自作の詩を朗読しながら各地を放浪。力強いリズムと新鮮なイメージによる『ウィリアム・ブース大将天国に入る』 General William Booth Enters Into Heaven (1913) をはじめ,『コンゴ川』 The Congo (14) ,『チャイニーズ・ナイチンゲール』 The Chinese Nightingale (17) などによって新詩運動の中心的存在となった。その後も続けて詩集を出したが 1920年以後には『小屋のともしび』 The Candle in the Cabin (26) 以外ほとんどみるべきものがなく,次第に人生に懐疑的になり,病的な良心に苦しんで服毒自殺をとげた。

リンゼー
Lindsay, John Vliet

[生]1921.11.24. ニューヨーク
[没]2000.12.19. サウスカロライナ,ヒルトンヘッド島
アメリカの政治家。エール大学卒業後,ニューヨーク州で弁護士を開業。 1955~56年共和党政権下で司法長官補佐官。 1959~65年ニューヨーク市選出共和党下院議員。自由党の支持も得て 1965年 11月共和党からニューヨーク市長に当選した。 1969年の市長選挙では党内予備選挙で敗れたが,自由党から出馬し再選。 1971年8月民主党に入党。 1972年 11月東京で開催された世界大都市会議に出席するため訪日した。 1973年市長退任後民間会社に復職。

リンゼー
Lindsay, Howard

[生]1889.3.29. ニューヨーク,ウォーターフォード
[没]1968.2.11. ニューヨーク
アメリカの俳優,劇作家。 R.クラウスとコンビを組んで,多くのすぐれた戯曲を書き,上演した。 1939年には C.デーの小説『父との生活』 Life with Fatherを脚色して主演,3213回のロングランを記録した。そのほかクラウスとはピュリッツァー賞受賞作『連邦の状態』 State of the Union (1946) ,ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』 Sound of Music (56) などの台本を合作している。

リンゼー
Lindsay, Alexander Dunlop

[生]1879. グラスゴー
[没]1931
イギリスの政治哲学者。プラトン研究から出発し,T.H.グリーン,ボサンケットらの理想主義的政治哲学を継承した。自発的結社の役割を強調した民主主義論を展開し,政治的には労働党と近い立場をとった。主著『民主主義の本質』 The Essentials of Democracy (1929) ,『現代民主主義国家』 The Modern Democratic State (43) 。

リンゼー
Lindsay, Norman (Alfred William)

[生]1879.2.23. クレスウィック
[没]1969.11.29. シドニー
オーストラリアの画家,著作家。 16歳でメルボルンの新聞に漫画,挿絵を寄稿。 1901年以降はニューサウスウェールズに移住。『シドニー・ブリティン』紙の漫画家として知られ,自作の小説を含む多くの著書の挿絵を描いた。主要作品は『ノーマン・リンゼーペン画集』 (1918) に収録。

リンゼー
Lindsay(Lyndsay), Sir David

[生]1490頃
[没]1555頃
スコットランドの詩人,政治家。宮廷人となり紋章院長官,皇太子 (のちのジェームズ5世) の式部官などをつとめた。当時の政治や聖職者を風刺した詩で有名。代表作は道徳劇『三階級風刺編』 Ane Satyre of the Thrie Estaits (1540) 。

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改訂新版 世界大百科事典 「リンゼー」の意味・わかりやすい解説

リンゼー
Nicholas Vachel Lindsay
生没年:1879-1931

アメリカの詩人。イリノイ州出身。自分のおもわくに反して,大衆的な吟遊詩人,ホイットマンの系列につらなる詩人として有名になった。代表作には《ウィリアム・ブース将軍天国に入る》(1913)がある。マス・メディアとしての詩を書き,〈内容〉やメッセージを重要視し,イマジズムの影響の圏外にあったため,現代詩人としての評価は低いほうである。精神分裂をきたして自殺した。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「リンゼー」の意味・わかりやすい解説

リンゼー

米国の詩人。〈シカゴ派〉の1人。大学卒業後,吟遊詩人を志し,詩集《ウィリアム・ブース将軍天国に入る》(1913年),《コンゴ》(1914年)等にまとめられた自作詩を宿代がわりに朗読しながら放浪した。晩年は不遇のうちに過ごし,服毒自殺を遂げた。

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367日誕生日大事典 「リンゼー」の解説

リンゼー

生年月日:1889年3月29日
アメリカの俳優,劇作家
1968年没

リンゼー

生年月日:1921年11月24日
アメリカの政治家
2000年没

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世界大百科事典(旧版)内のリンゼーの言及

【映画】より

…同じころ,他の芸術との対比において映画の独自性を強調し,証明する方向に向かっていったカニュードは,映画における演劇性,とくに演劇をフィルムに撮っただけのフィルム・ダール社の作品を映画の敵とみなし,〈エクラニスト〉,すなわち〈スクリーンの芸術家〉は,〈現実を自分の心の夢に形どって変形し,魂の状態を表現するために光を細工しなければならない〉と主張するに至るのである。
[映画における〈芸術的差別〉]
 アメリカにおける映画批評の原点として知られるN.V.リンゼーの《映画の芸術The Art of the Moving Picture》が出版されたのは,D.W.グリフィスの大作《国民の創生》が公開された1915年のことであった。詩人のリンゼーは,例えば映画館をピラミッドの玄室の暗やみにたとえたり,女優のメリー・ピックフォードをボッティチェリの絵の女に比較したり,映画を絵画や他の芸術とのアナロジーにおいてとらえ,映画の本質を〈アクション(動き)〉〈インティマシー(人情)〉〈スプレンダー(壮麗)〉という三つの要素に還元し,〈動きの映画は彫刻に動きを与えたものであり,人情の映画は絵画の動いたものであり,壮麗の映画は動く建築である〉と定義した。…

※「リンゼー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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