オーストラリア南東部の州。面積80万1600平方キロメートル、人口637万1745(2001)。州都はシドニー。自然条件および土地利用は東から西に向かって推移する。東部の海岸地帯は東部高地(グレート・ディバイディング山脈)から太平洋(タスマン海)に流出する河川の沖積低地および東部高地東端の台地・丘陵で、年降水量が1000ミリメートルを超える所が多く、集約的な酪農・園芸農業が発達している。その西は東部高地の山地・高原地帯でテーブルランド地方ともよばれ、年降水量500~1000ミリメートルの集約的牧畜(おもに肉・毛用ヒツジ)地帯である。東部高地西斜面は西に向かって緩やかに高度を下げる台地・丘陵地帯で、スロープ地方とよばれ、その西の内陸平原地帯へと続く。西斜面から内陸平原東部および南部にかけては年降水量500ミリメートル前後の小麦・ヒツジ地帯で、とくに内陸平原南部のラクラン川からマリー川にかけての農牧地帯はリベリナ地方Riverinaとよばれる。内陸平原西部は乾燥した粗放的牧羊(毛用)地帯で、北西部では年降水量が200ミリメートル以下となる。州人口の大部分が海岸地帯(100キロメートル以内)に集中し、シドニー、ニューカッスル、ウロンゴングの3都市圏が州人口の約4分の3を占める。
同州は人口・経済規模の点でオーストラリア最大の州で、ビクトリア州とともに相対的に工業に特化(専門化)しているが、農牧業および鉱業においても全国的に重要である。工業の中心はニューカッスルおよびウロンゴングの鉄鋼業で、粗鋼生産量は全国の8割以上を占める。このほか、シドニーを中心に金属、機械、化学などの工業が発達し、工業生産額は同国最大(全国の4割弱)である。農牧業の中心は小麦、羊毛で、ともに全国の約3分の1を生産する。森林の少ないオーストラリアのなかでは森林資源に恵まれた州で、林産額も同国最大である。鉱業の中心はシドニー炭田の石炭、ついでブロークン・ヒルの鉛・亜鉛で、いずれも全国の約6割を産出する。主要輸出品は石炭、羊毛、鉄鋼、小麦などで、日本は最大の輸出先であるとともにアメリカと並ぶ主要輸入先でもある。
J・クックによる大陸東岸の領有宣言・命名(1770)ののち、1786年に東経135度以東全域が正式にニュー・サウス・ウェールズ植民地となり、他の植民地が順次分離して現在の領域に近づいてきた。1788年シドニーに流刑植民地として入植され、1810年以降内陸開拓が進み、1855年に自治植民地となった。1901年他州とともに連邦結成に加わった。
[谷内 達]
オーストラリア南東部の州。面積80万0642km2,人口655万(2006)。州都はシドニー。年降水量は海岸部(1000mm以上)から北西部の内陸(200mm以下)へと順次減少する。土地利用も海岸部の集約的な酪農・園芸農業地帯から東部高地の集約的牧羊地帯,東部高地西斜面から内陸平原にかけての小麦・羊地帯,さらに内陸の粗放的牧羊地帯へと推移する。人口の大半が海岸部,とくにシドニー,ニューカスル,ウランゴングの三大都市圏に集中している。人口,経済活動規模の点でこの国最大の州である。ニューカスルおよびウランゴングの鉄鋼業をはじめ金属・機械・化学工業が発達し,州の工業生産額は全国の4割に達する。農牧業における小麦と羊毛,鉱業における石炭,鉛・亜鉛も全国的に重要である。主要輸出品は石炭,羊毛,鉄鋼,小麦などで,日本がそれらの最大の輸出先である。
1770年にクックが大陸東岸の領有を宣言するとともにニュー・サウス・ウェールズと命名,86年に東経135°以東の全域が正式にニュー・サウス・ウェールズ植民地となり,その後,他の植民地(現,タスマニア,ビクトリア,クイーンズランド)が順次分離して現在の領域に近づいた。88年シドニーが流刑地として入植され,1810年ころから内陸の開拓が進み,55年に自治植民地となった。1901年に連邦結成に伴い州となり,11年に首都設置のため連邦政府直轄地区を分離した。
執筆者:谷内 達
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…西斜面はとくにゆるやかで,中央低地に連続する。東部高地の古生層にも西部台地の先カンブリア層に次いで金属鉱床の発達が見られ,またクイーンズランド中部およびニュー・サウス・ウェールズ中部の堆積層には主として古生代末期(二畳紀)に形成されたボーエン炭層およびシドニー炭層が見られる。さらにビクトリア東部の第三紀層では褐炭の埋蔵が知られている。…
※「ニューサウスウェールズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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