リン酸水素ナトリウム(読み)りんさんすいそなとりうむ(英語表記)sodium hydrogenphosphate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リン酸水素ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

リン酸水素ナトリウム
りんさんすいそなとりうむ
sodium hydrogenphosphate

リン酸の水素ナトリウム塩(いわゆる酸性ナトリウム塩)。次の2種類のものがある。(1)リン酸水素二ナトリウムdisodium hydrogenphosphate 第二リン酸ナトリウムともいう。化学式Na2HPO4、式量142.0。リン酸に当量の水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH8.9~9.0で濃縮すると、35℃以下で十二水和物、35.4~48.35℃で単斜晶系の七水和物、48.35~95℃で斜方晶系の二水和物、95℃以上で無水和物が得られる。無水和物は無色潮解性の粉末。240℃で分解してピロリン酸ナトリウムNa4P2O7となる。水溶液は微アルカリ性。十二水和物は風解性があり、空気中に長く放置すると二水和物となる。媒染剤、工業用洗剤、清缶剤に用いられる。薬局方でリン酸ナトリウムというときはこの化合物をさす。(2)リン酸二水素ナトリウム 第一リン酸ナトリウムともいう。化学式NaH2PO4、式量138.0。リン酸水素二ナトリウムの溶液に当量のリン酸を加え、蒸発濃縮する。また、リン酸に当量の水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムの水溶液を加え、pH4.4~4.6で蒸発濃縮すると、41℃以下で斜方晶系の二水和物が、41~58℃で斜方晶系の一水和物が、58℃以上で六方晶系の無水和物が析出する。一水和物は水100グラムに0℃で71グラム溶ける。エタノールエチルアルコール)には不溶。酸性の洗浄剤、清缶剤、細菌培養、緩衝液成分などに用いられる。

[鳥居泰男]

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