翻訳|detergent
せっけんや合成界面活性剤を主成分とした水溶性の洗浄剤であって、その界面活性作用によって物質の表面の汚れを落とすのに使用される薬剤である。洗剤は物質や汚れの表面に浸透、吸着し、油性の汚れや固体の汚れを乳化または分散させることにより表面を清浄にする。洗剤には、洗浄作用の強さからみるとライトデューティー洗剤、ヘビーデューティー洗剤(重質洗剤)に分類される。用途からみると、衣料用、台所用、住居用、シャンプーに分類され、それぞれの汚れをよく落とすように成分が配合されている。主成分からみると、衣料用洗剤と台所用洗剤は、合成洗剤、複合せっけん、せっけんに分類されており、これらの名称は商品に明示されている。
[早野茂夫・篠塚則子]
洗剤を用いていろいろな汚れを落とすことを洗浄というが、ここでは主として洗濯、すなわち衣料に付着した汚れを洗剤を用いて除く場合を考えることにする。実際には汚れの種類や付着物の種類が複雑で、洗濯の全過程を説明することは簡単でない。
繊維に固体粒子か油が付着している場合、その洗浄の過程は、(1)洗剤溶液の表面張力が下がり、湿潤、浸透作用によって汚れと繊維の界面、あるいは汚れの内部に浸透して衣料をぬらす。(2)汚れを繊維表面から分離する。これには洗剤の溶解、分散、乳化、可溶化などの作用が働き、分離した汚れ粒子を洗剤溶液のほうへ運ぶ。(3)汚れ粒子をミセルによって洗剤溶液中に安定に分散させ、繊維上への再沈着を防止する。
以上が洗濯の主要な過程であるが、洗剤は繊維の表面に吸着して、表面に汚れが再付着するのを防止したり、また汚れが泡の表面に高濃度に吸着して洗剤溶液中の汚れを少なくする働きもある。なお、洗濯時の機械的な力は、汚れの表面を攪拌(かくはん)して汚れを落としやすくする効果があると考えられる。
[早野茂夫・篠塚則子]
洗濯,洗浄を行う場合に添加して,その効果をあげるために用いる物質。洗浄剤ともいう。代表的なものはセッケンであるが,最近は各種の合成洗剤も広く用いられている。これらは一般に,水に少量添加することにより,固体表面に付着した汚れ物質を除去する機能をもつもので,界面活性剤の一種である。洗剤としてのセッケンは,弱酸強アルカリ塩であるため硬水中の使用に適さない。すなわち,冷水で機能が落ち,アルカリに弱い衣料をいためるなどの欠点がある。このため各種の合成洗剤が開発されてきた。洗剤は一般生活で多用されるため,その安全性,残留物などによる公害問題に留意しなければならない。とくに残留洗剤の生物分解性については,分解性のあるものをソフト洗剤,難分解性のものをハード洗剤と呼んでいる。現在家庭で使用される洗剤のほとんどはソフト洗剤である。添加物としてのビルダーも,ポリリン酸塩の廃水の富栄養化による公害防止のため,無リン化,白土の使用などが行われている。
→合成洗剤 →セッケン
執筆者:内田 安三
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[陽イオン界面活性剤]
分子の界面活性を示す部分が正に帯電しているもので,いろいろのアミン誘導体が利用されている。従来のセッケンや一般の洗剤は解離して活性分子が陰イオンに帯電するのに反し,これらは逆に陽イオンとして解離するので,陽性セッケン,または逆性セッケンともよばれる。陽イオン界面活性剤は親油基の物理化学的性能とともに,その正荷電イオンが負荷電の繊維およびその染料,微生物,金属などに吸着,結合するため,繊維の柔軟仕上剤,染色助剤,撥水(はつすい)剤,殺菌洗浄剤,帯電防止剤,凝集剤としての用途が多いが,その量は陰イオン界面活性剤に比べてはるかに少ない。…
…(6)不潔な衣服は多くの黴菌(ばいきん)が繁殖し種々の疾病の原因となり,身体に有害であるという保健・衛生上の理由である。 洗濯は服装の文化と相関関係にあり,服装が変化すると同時に洗濯の仕方,新しい洗剤の誕生,のり(糊)のつけ方,仕上げの方法とその道具までが移り変わりながら現在にいたっている。
【歴史】
[日本]
伊勢神宮の五十鈴川は,神鏡を奉持した倭姫(やまとひめ)命の衣の裾が水に浸ったところから,一名御裳濯(みもすそ)川と呼ばれていた。…
※「洗剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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