改訂新版 世界大百科事典 「レアンドロス」の意味・わかりやすい解説
レアンドロス
Leandros
ギリシア伝説で,アビュドス(ヘレスポントス海峡最狭部の小アジア側の町)の青年。ラテン名レアンデルLeander。祭礼のおり,対岸(ヨーロッパ側)の町セストスで女神アフロディテの巫女ヘロHērōと知り合い,以後,彼女の掲げる灯火をたよりに,毎夜海峡を泳ぎ渡って逢瀬を重ねていたが,ある夜,嵐のために火が消え,彼は目標を失って溺れ死んだ。それを知ったヘロも,海に身を投じて恋人のあとを追ったという。ヘレニズム時代に生まれたこの悲恋物語はローマ詩人オウィディウスの《名婦の書簡》によって後世に伝えられ,5世紀の叙事詩人ムーサイオスの《ヘロとレアンドロス》を介して,イギリスの詩人マーローの物語詩《ヒアローとリアンダー》(1598年に死後出版)を生んだ。またバイロンは1810年みずからアビュドス~セストス間を遊永し,3年後《アバイドスの花嫁》を公表した。絵画ではルーベンス,ターナーらにこの物語に取材した作品がある。
執筆者:水谷 智洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報