レン(読み)れん(英語表記)Ludwig Renn

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レン」の意味・わかりやすい解説

レン
Wren, Sir Christopher

[生]1632.10.20. イーストノイル
[没]1723.2.25. ハンプトンコート
イギリスの建築家,科学者。父は牧師幼時から自然科学にすぐれた才能を示し,1653年にオックスフォード大学修士号を取得。 61年同大学天文学教授。この頃から建築に関心を寄せ,同大学のシェルドン記念講堂 (1662~63) を設計。 64~65年パリを訪れ,G.ベルニーニに会い,また,J.H.マンサール,L.ル・ボーらに学ぶ。帰国後ロンドンの大火 (66) を機に大規模な都市再建計画を提案,69年には建築総監に任命された。都市計画は実現しなかったが,代表作セント・ポール大聖堂 (75~1710) ,セント・メリー・ル・ボー聖堂 (1670~77) ,セント・スチーブン聖堂 (72~87) をはじめ,52の聖堂ほか多数の建築を完成した。ほかにケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジ図書館 (76~84) ,チェルシー王立病院 (82) ,ハンプトン・コート宮殿東部増築 (89~1701) ,グリニッジ病院 (1696着工,死後完成) なども設計。その間天文学者として,彗星や土星の輪を研究し,ロイヤル・ソサエティの創立委員として,81~83年には3代会長をつとめた。 85~87年と 1701~02年には下院議員をつとめており,フリーメーソンに属していたともいわれる。

レン
Renn, Ludwig

[生]1889.4.22. ドレスデン
[没]1979.7.21. 東ベルリン
ドイツ小説家本名 Arnold Vieth von Golssenau。第1次世界大戦参加,その体験を『戦争』 Krieg (1928) で即物的に描いた。共産党に入り,1933年ヒトラー政権により投獄されたが,脱走して亡命スペイン内乱の際,ドイツの義勇軍であるテールマン大隊の隊長をつとめた。 47年メキシコから東ドイツに帰った。その他『戦後』 Nachkrieg (30) ,『スペイン戦争』 Der spanische Krieg (55) などの作品がある。

レン
Wren, Percival Christopher

[生]1885. デボン
[没]1941.11.23. グロスターシャー
イギリスの小説家。オックスフォード大学に学んだ。第1次世界大戦に参加。フランス外人部隊での体験に基づく『美徳の報酬』 The Wages of Virtue (1916) ,『フランスの継子』 Stepsons of France (17) ほか多数の作品がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「レン」の意味・わかりやすい解説

レン(Sir Chrisopher Wren)
れん
Sir Chrisopher Wren
(1632―1723)

イギリスの科学者、建築家。ウィルトシャーのイースト・ノイルに高教会派の司祭の息子として生まれ、幼時から自然科学に才能を示した。1657年にはロンドンで、60年にはオックスフォードで天文学の教授を務め、ロイヤル・ソサイエティーの創立メンバーの一人でもあった。ケンブリッジのペンブローク・カレッジ礼拝堂の設計(1663)から本格的に建築に取り組み、65~66年をパリでフランス古典主義建築の研究に費やす。ベルニーニにも会っている。66年9月ロンドンをみまった大火が彼に大きな機会を与えることになった。彼の提案したバロック的なロンドン再建都市計画こそ実現しなかったものの、建築総監としてセント・ポール大聖堂の再建(1675~1710)や51の教区教会堂の再建(1670~86)に腕を振るい、ケンブリッジのトリニティ・カレッジの図書館(1676~84)やグリニジ・ホスピタル(1702)など数多くの建築を設計建造した。バロック的な要素を巧みに取り入れた彼の雄勁(ゆうけい)な古典主義建築は、範として長く後代の建築家に慕われた。

[谷田博行]



レン(Ludwig Renn)
れん
Ludwig Renn
(1889―1979)

ドイツの小説家。ドレスデンの貴族出身。第一次世界大戦従軍日記を基に報告文学『戦争』(1928)を書き、39か国語に翻訳される。さらに戦後の革命体験に基づき『戦後』(1930)を発表。1927年共産党に入党、左翼雑誌『リンクス・クルベ』編集長、プロレタリア・革命作家同盟書記を経て、32年から35年まで投獄される。スイスへ脱出後『大いなる遍歴の前に』(1935)を書く。スペイン内乱で人民戦線側に参戦後、メキシコで反ナチ運動を指導。戦後帰国し、『スペイン戦争』(1955)などの作品を発表した。

[酒井 府]

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