ロドチェンコ(読み)ろどちぇんこ(その他表記)Александр Михайлович Родченко/Aleksandr Mihaylovich Rodchenko

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロドチェンコ」の意味・わかりやすい解説

ロドチェンコ
ろどちぇんこ
Александр Михайлович Родченко/Aleksandr Mihaylovich Rodchenko
(1891―1956)

ロシアの画家舞台装置家、写真家、デザイナーサンクト・ペテルブルグに生まれる。カザン美術学校に学び、1910年代後半から抽象的コンポジション絵画でデビュー、きわめて多彩かつ豊かな美的世界を創造した。20年から30年にかけてモスクワ後進の指導にあたったが、その間も多くの分野で活躍した。すなわち、20年代には、いまなお有名な数多くのポスター(映画『戦艦ポチョムキン』など)を制作したほか、書籍の装丁でもユニークな仕事を残した。また、演劇や映画では装置家として多彩な活躍をし、写真家としてはフォトモンタージュを手がけ、この分野でも優れた作品がある。30年代には芸術写真のほか有名人のポートレートも撮っている。モスクワに没。旧ソ連美術界にあってデザイナーとしての開拓者的な仕事をした人物であり、「雪どけ」後ようやく、初期の抽象的コンポジションをはじめ、その全業績が再評価される気運にあった。夫人ステパーノワВарвара Ф.Степанова/Varvara F. Stepanova (1894―1958)も画家、デザイナーとして有名。

木村 浩]

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改訂新版 世界大百科事典 「ロドチェンコ」の意味・わかりやすい解説

ロドチェンコ
Aleksandr Mikhailovich Rodchenko
生没年:1891-1956

ソ連邦の造形作家,デザイナー。ペテルブルグ生れ。1915年モスクワに出て定規コンパスで線の絵画,線の空間構成を制作。革命後はV.F.ステパノワとともに生産主義を唱え,家具や室内のデザインをする一方,詩人マヤコーフスキー主宰の雑誌《LEFレフ)(芸術左翼戦線)》に協力。詩集の挿絵,雑誌の表紙,ポスターなどのグラフィック・デザイン,写真,写真のコラージュなどの分野で構成主義的な作品を制作した。
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百科事典マイペディア 「ロドチェンコ」の意味・わかりやすい解説

ロドチェンコ

ロシア・アバンギャルドの画家。建築やタイポグラフィー,デザイン,写真など多才な活動を展開した。1917年から1921年にかけて定規やコンパスを用いた無対象絵画を創作。1922年に詩人マヤコーフスキー〔1893-1930〕を中心に結成された芸術集団〈レフ〉に参加し,機関誌の表紙デザインを担当した。写真作品では光と影,遠近法を駆使した構成手法を深求し,斬新なフォト・モンタージュを制作している。
→関連項目構成主義

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロドチェンコ」の意味・わかりやすい解説

ロドチェンコ
Rodchenko, Aleksandr

[生]1891.12.5. ペテルブルグ
[没]1956.12.3. モスクワ
ソ連の画家,デザイナー,写真家。カザンの美術学校およびモスクワの美術工芸学校に学んだ。 1914年頃 K.マレービッチの影響を受け純粋抽象に向い,革命後は構成主義運動に参加した。 22年以後,美術と工芸の結びつきを主張し,舞台装置,工業デザイン,装丁,写真,ポスター,タイポグラフィなど多方面にわたって活躍。ロシア・アバンギャルドの代表的美術家と目される。主要作品『黒の上に黒』 (1918) はマレービッチの『白の上の白』に対抗したもの。

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世界大百科事典(旧版)内のロドチェンコの言及

【構成主義】より

…もともとは1921年ころ革命後のロシアに現れた前衛美術運動の一派であるが,その後東欧から中欧にかけて,ジャンルのうえではデザインや建築にまで広がった大規模な国際的芸術運動である。画架(イーゼル)にのせて描く絵画を否定し,現代社会で普通にみられる工業材料(金属,ガラスなど)を使って物理学的な均衡感覚に基づく抽象的な美や,運動という力動的な美を表現する構成主義的な作品としては,1920年のロドチェンコの《吊り構成》やタトリンの《第三インターナショナル記念塔》(案)などがある。しかし,構成主義という言葉が初めて使われたのは21年ステンベルグ兄弟とメドゥネツキーの展覧会(モスクワ)においてであった。…

※「ロドチェンコ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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