日本大百科全書(ニッポニカ) 「戦艦ポチョムキン」の意味・わかりやすい解説
戦艦ポチョムキン
せんかんぽちょむきん
Броненосец Потёмкин/Bronenosets Potyomkin
ソ連映画。1925年作品。監督セルゲイ・エイゼンシュテイン。革命後のソビエト映画の誕生を世界に告げた作品であるばかりでなく、映画史上を通じてのサイレント映画の傑作である。1905年に実際に起こったポチョムキン号の反乱に題材をとり、十月革命への先導者として反乱の水兵たちをたたえている。物語は、水兵たちと蛆(うじ)、甲板上の反乱、死者の訴え、オデッサ(現、オデーサ)の階段、艦隊の出会い、と五部構成をなしており、速いテンポ、動的な画面、力強い構図、断片的モンタージュという特徴をみせながら、記録映画的な性格をもあわせもっている。特定の主人公をもたない集団描写、立ち上がる石のライオン像などに代表される象徴的モンタージュ、動と静が交錯する緩急のリズム、革命への熱いメッセージなど、当時の興行中心の映画製作とは異質の新しさによって観客を圧倒した。なかでも、オデッサの市民がツァーの兵士たちによって虐殺される「オデッサの階段」のシーンは有名である。プロパガンダ映画の完璧(かんぺき)な例として、またモンタージュ理論の優れた例として、世界の映画人に与えた影響は大きい。日本では1959年(昭和34)の非劇場自主上映、1967年の一般公開が初上映である。オリジナル・プリントが失われたため、検閲カットによる不完全なプリントが出回っていたが、1976年ソ連本国で完全版が編集され、日本では翌年に公開された。
[岩本憲児]
『山田和夫監修『エイゼンシュテイン全集2 戦艦ポチョムキン』(1974・キネマ旬報社)』▽『山田和夫著『戦艦ポチョムキン』(1978・大月書店)』