フォトモンタージュ(読み)ふぉともんたーじゅ(英語表記)photo-montage フランス語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォトモンタージュ」の意味・わかりやすい解説

フォトモンタージュ
ふぉともんたーじゅ
photo-montage フランス語

写真による表現技巧の一つモンタージュの本来の語義は「組み立てる」「はめ込む」であり、映画用語としては編集によるイメージの複合から新たな意味を創出すること。写真においては二つ以上の複数画像の合成を意味し、フィルム印画紙への多重露光で制作する場合と、複数の断片的な写真画像を貼(は)りあわせたフォトコラージュを、撮影し印画化したものなどがある。1915年、ドイツダダイスト、ジョン・ハートフィールドJohn Heartfield(1891―1968)とゲオルグ・グロッスが共同制作し、とりわけハートフィールドは1930年代初期、この手法によってナチスを痛烈に風刺し、亡命を余儀なくされた。バウハウスモホリナギはこの技法の写真美学的な意味づけを行い、彼自身は抽象表現作品にこれを応用した。

 第二次世界大戦後この手法は衰えたが、広告や宣伝分野では広く使用され、また現実と仮想を組み合わせて表現できるという性格から、木村恒久(つねひさ)(1928―2008)の作品にみられるように、社会風刺的な手法として根強く使われている。日本では1971年(昭和46)マッド・アマノ(1939― )が白川義員(よしかず)のスキー写真にスノータイヤの写真をモンタージュした風刺作品が、写真著作権をめぐっての裁判となり、社会的に注目された。1990年代になると、パーソナルコンピュータ普及で、写真画像が容易によりリアルデジタル合成できるようになり、写真における一つの表現技巧として新たな段階を迎えつつある。

[重森弘淹・平木 収]

『ドーン・エイズ著、岩本憲児訳『フォトモンタージュ 操作と創造――ダダ、構成主義、シュルレアリスムの図像』(2000・フィルムアート社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フォトモンタージュ」の意味・わかりやすい解説

フォトモンタージュ
photomontage

写真用語。合成写真。2枚以上の紙焼き写真の合成,複数のフィルムからの合成焼付け,または同一フィルムに多重露出をして,写真家の寓意的表現性を強める技法,またはその作品。ドイツの J.ハートフィールドとドイツ人画家 E.グロッスによって,1919年に初めて発表された。また犯人捜査に使われる合成の顔写真を,日本の警察用語でモンタージュ写真と呼んでいる。

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