ワインヘーバー(読み)わいんへーばー(その他表記)Josef Weinheber

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワインヘーバー」の意味・わかりやすい解説

ワインヘーバー
わいんへーばー
Josef Weinheber
(1892―1945)

オーストリア詩人、小説家、風景画家。ウィーン生まれ。早く両親を失い、孤児院で育てられた。小説『孤児院』(1924)にその生活が描かれている。1911年から22年間ウィーン郵便局に勤め、34年以来詩業に専念した。最初の3冊の詩集は注目をひかなかったが、時代の危機を英雄的な態度で克服することを美しい形式の詩で歌った『高貴没落』(1934)で一躍有名になった。そののち『おそい栄冠』(1936)などを経て、時代を超えて立つ永遠の人間像を40の頌歌(しょうか)で歌い上げた『神々と鬼神たちとの間』(1938)は内容・形式ともに彼の詩業の頂点を示す壮大な作である。『室内楽』(1939)などを発表ののち、第二次世界大戦でソ連軍がウィーンへ迫った際に、睡眠薬の中毒で没した。遺作の詩集に『ここに言葉あり』(1947)がある。

[岡 清志]

『小松太郎訳『ひたぶるにわたしは芸術を愛した』(『世界名詩集大成8』所収・1959・平凡社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワインヘーバー」の意味・わかりやすい解説

ワインヘーバー
Weinheber, Josef

[生]1892.3.9. ウィーン
[没]1945.4.8. キルヒシュテッテン
オーストリアの詩人。幼くして父を失い,孤児院に収容された。肉屋で働きながら苦学を続け,長らく郵便局に勤めた。ナチスに共鳴し,ソ連軍の進攻直後に睡眠薬中毒で死亡。自殺と推定されている。象徴派の詩人として出発したが,次第に西ヨーロッパ文化の『高貴と没落』 Adel und Untergang (1934) を意識し,ヘルダーリーンを鑑に,文明の没落と人間の情熱の葛藤をうたい上げた。詩集『ウィーン,言葉のままに』 Wien wörtlich (35) ,『神々と悪魔たちの間に』 Zwischen Göttern und Dämonen (38) などがある。

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