ワニアマダイ(読み)わにあまだい(英語表記)Castelnau's jawfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワニアマダイ」の意味・わかりやすい解説

ワニアマダイ
わにあまだい / 鰐甘鯛
Castelnau's jawfish
[学] Opistognathus castelnaui

硬骨魚綱スズキ目アゴアマダイ科に属する海水魚。沖縄本島、西表島(いりおもてじま)、南シナ海、フィリピン諸島など西太平洋に分布する。体は細長く、頭部を除いてよく側扁(そくへん)する。頭部はやや円筒形。吻長(ふんちょう)はきわめて短く、およそ目の半分。目は大きくて、頭の背縁近くの吻の上方に位置する。口は非常に大きく、ほとんど水平に開く。上顎(じょうがく)の後端は前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁を越えて伸長し、その後端は上向きに突出して、とがる。上下両顎の前部には歯帯があり、側方には円錐歯(えんすいし)が1列に並ぶ。側線鰓孔上端のすこし上方から始まり、背びれ基底近くの下方を通って、背びれ第5軟条付近で終わる。鰓耙(さいは)は上枝に11~12本、下枝に18~20本が並ぶ。鱗(うろこ)はきわめて小さい。背びれは鰓孔の上端の上方から始まり、棘部(きょくぶ)と軟条部は完全に連続し、11棘14軟条。背びれ第1棘の先端はとがる。臀(しり)びれは背びれ第2軟条下方から始まり、2棘14~15軟条。尾びれの後縁は丸い。胸びれは伸長せずに丸い。腹びれは短く、外側の2軟条は不分枝で、肥厚する。体と頭は暗褐色で、体側に4本の不鮮明な細い縦帯が走る。背びれは基底に8~9個の黒褐色の斑紋(はんもん)が並び、上半部には2本の細い暗褐色の縦線が走る。上顎の後端の内側に2本のくさび形の黒色線がある。本種の生態はよく知られていない。水深20~100メートルから釣りや、底引網でまれにとれる。多くのアゴアマダイ科の他種と同様に、砂礫(されき)底に垂直の穴を掘って生息していると考えられる。体長は25センチメートルほどになる。

 アゴアマダイ科は、口が大きく、頭は無鱗(むりん)、腹びれは1棘5軟条で、外側の2本の軟条は強くて不分枝、内側の3本の軟条は弱くて分枝するのが顕著な特徴である。同科に属するニラミアマダイO. iyonis(日本海沿岸では佐渡島(さどがしま)、太平洋沿岸では東京湾以南から知られている日本の固有種)は、背びれと臀びれ軟条が多くて13本以上あること、主上顎骨の後端が前上顎骨の後端を越えることなどでワニアマダイに似るが、ニラミアマダイは背びれ基底に黒斑が1個であること、主上顎骨の後端が鰓蓋部に達しないことで本種と区別できる。

[尼岡邦夫 2023年10月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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