改訂新版 世界大百科事典 「アカウキクサ」の意味・わかりやすい解説
アカウキクサ
Azolla imbricata (Roxb.) Nakai
水田,池沼,城濠などに生えるアカウキクサ科の小さな浮遊性草本のシダ植物。植物体は赤色を帯びているので,赤浮草と呼ばれ,蚊に似ているところからこの類はmosquito fernといわれる。茎は密に羽状に分枝して,全体が三角形になり,長さは1~1.5cmである。葉は長さ0.5mm,2列に互生し,上下2片に分裂し,中にラン藻類の1種Anabaenaが共生する。根は茎から出て水中に垂れる。胞子囊群は側枝の第1葉につき,囊状の包膜に包まれる。胞子は異型で,小胞子はいかり状のかぎ状毛をもつ球状体に包まれる。大胞子は浮遊器官をつけ,1個だけが大胞子囊にできる。おもに近畿以西の本州,四国,九州に分布する。日本には近縁種として大型で赤緑色を帯びるオオアカウキクサA.japonica Fr.et Sav.が自生するが,これは夏に盛んに繁殖するので,稲作や養魚などに支障をきたす。アカウキクサ科Azollaceaeは世界に広く分布し,1属6種が知られている。
執筆者:加藤 雅啓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報