水中または水辺に生育し、植物体のすべて、または大部分が水中にある維管束植物をいう。水生植物は普通、水草(みずくさ)とよび、日本にはおよそ500種ほどがある。これらの水草は吸収器官や通道組織を有し、生殖器官が空気中で開花するので、陸上生活をしていた植物がふたたび水中生活に移行したものであろうと考えられている。生育場所は淡水の湖沼や溜池(ためいけ)、河川、水田、水湿地などであるが、アマモやウミヒルモなどのように、種子植物でありながら、浅海産の海草類も含まれる。
水生植物をラウンケルの生活型(形)によって分類すると、地中植物に属し、全世界の植物の約2%を占める。日本では約4%である。また、水生植物は、生育する状態によって、固着性水生植物と浮漂性水生植物とに分類する場合が多い。この場合、前者をさらに抽水(ちゅうすい)植物・浮葉植物・沈水植物、後者を浮水植物と浮遊植物とに分類する。この分類に沿って代表的な水生植物をあげると次のようになる。
(1)抽水植物 茎の下部が水面下にあるもので、アシ(ヨシ)、マコモ、ガマ、ハス、コウホネ、オモダカ、ミズアオイなどが含まれる。
(2)浮葉植物 水底に根があり、葉を水面に浮かべているもので、アサザ、ガガブタ、ヒシモドキ、ヒシ、ヒツジグサ、ジュンサイ、オニバスなどが含まれる。
(3)沈水植物 水底に根があり、葉が水面下にあるもので、フサモ、マツモ、クロモ、エビモ、イバラモ、セキショウモなどが含まれる。
(4)浮水植物 茎や葉が水面上にあり、根が水中に垂れているもので、ウキクサ、ホテイアオイ、サンショウモ、アカウキクサなどが含まれる。
(5)浮遊植物 茎や葉が水面下にあり、根がないものとしてタヌキモやムジナモなど、根が貧弱なものとしてヒンジモなどが知られている。
なお、沈水植物と同じ水域にはシャジクモとかフラスコモのような車軸藻類がみられ、水草として扱われることもあるが、これらは大形の藻類に属する仲間である。
一般に、抽水植物は湿生植物に類似したところが多いが、浮葉植物や浮水植物の葉は広くて大きく、細胞間隙(かんげき)が発達している。また、沈水植物の葉は薄くて細長いか細裂しているため、水流の抵抗が少なく、浮きやすいうえに、機械組織が発達せず、軟質でもろい。このほか、沈水植物や浮葉の裏面には気孔がないため、体表面でも養分を吸収することのできる仕組みがある。
水生植物を生殖の面からみると、花期が長く、種子で殖えるほか、夏芽や冬芽、ちぎれた茎葉で無性生殖するものもある。
[大滝末男]
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…水生植物のことで〈みずくさ〉ともいう。植物体全体が水中にあり,根が水底についているクロモ,エビモなどの沈水植物と,ジュンサイ,ヒルムシロなどの水面に浮かぶ葉をもつ浮葉植物floating‐leaved plant,ガマ,ハスなどの葉や茎が水面上にでる抽水植物emergent plant(挺水植物ともいう),根が水底につかず,植物体全体が水面や水面下で浮遊するウキクサ,タヌキモなどの浮水植物floating plantからなる。…
…多年生植物については,地上部が残るか残らないかを,越冬芽(耐乾芽など,植物の生活にとって不適当な条件を切り抜けるための抵抗芽一般を含む)が地表面からどれくらいの高さにあるかによって区別する。ラウンケルの生活形を整理すると,まず,地上植物(芽が地表より30cm以上高いもの),地表植物(芽の位置が地表30cmより低いもの),半地中植物(芽が地表にあるもの),地中植物(芽が地中にあるもの),夏緑性一年生植物(不適な時期を種子で過ごすもの)の区分ができ,さらに地上植物は,芽の位置が地表から30m以上の高さのもの(巨大地上植物),8~30mの高さのもの(大型地上植物),2~8mの高さのもの(小型地上植物),0.3~2mの高さのもの(矮小(わいしよう)地上植物)や,多肉植物,着生植物などに,地中植物は土中植物,水生植物などが区別されている。ラウンケルはこの類型化をもとにして,世界のさまざまの地域に生育する植物各1000種を無作為に選び出し,類型化された生活形がそれぞれどのような割合で分布しているかをパーセントで示した生活形標準表normal spectrum of life formを作成した。…
…乾燥地でも湿地でもない適湿な普通の土地に生育する植物。生育場所の水分条件によって植物を分類した時に,中生植物は乾生植物,湿生植物hygrophyte,水生植物hydrophyte,塩生植物のいずれにも入らない中間的な場所に生育する植物で,最も多くの植物が当てはまる。水分条件に関して特殊化した共通な形態的・生理的特徴はみられない。…
※「水生植物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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