アスパラガス(読み)あすぱらがす

精選版 日本国語大辞典 「アスパラガス」の意味・読み・例文・類語

アスパラガス

〘名〙 (asparagus) ユリ科キジカクシ属の多年草の総称。温室や庭園で栽培されるシノブボウキタチボウキ、ノギノハカズラ、クサスギカズラタチテンモンドウなど多数の種類がある。食用とする種は、南ヨーロッパ原産。主として北海道で栽培される。高さ一・五メートル。葉は退化して褐色の鱗片(りんぺん)となり茎に密着し、細い枝が葉の代用をして上部でよく分枝する。雌雄異株で、初夏、枝の節から細い柄を出し、釣り鐘状の淡黄色の小花を開く。果実は球形で赤く熟す。若い茎は軟らかいので生食するか、加工する。食用アスパラガス。

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デジタル大辞泉 「アスパラガス」の意味・読み・例文・類語

アスパラガス(asparagus)

キジカクシ科の多年草。高さ約1.5メートル。葉はうろこ状で、茎が伸びると脱落する。主茎から多数の枝を出し、さらに節に細い葉のような枝が数個集まってつく。雌雄異株。夏、黄緑色で釣鐘形の小花をつける。ヨーロッパの原産で、多肉で太い若茎を食用にする。オランダきじかくし。まつばうど。アスパラ。 春》

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アスパラガス」の意味・わかりやすい解説

アスパラガス
あすぱらがす
[学] Asparagus officinalis L.

ユリ科(APG分類:キジカクシ科)の多年草。和名オランダキジカクシマツバウドともよばれる。ヨーロッパ、西アジア、クリミア半島の原産で、世界の温帯各地に栽培される。春から夏にかけて、鱗(うろこ)状の頭部をもった筆の穂先形の太い芽を出す。食用にするのはこの新芽である。茎は多肉質で高さ1.5~2.5メートル、直立した主茎から多くの分枝を出し、各分枝の先は1~2センチメートルの松葉状の小枝となる。この「アスパラガスの葉」は植物学的には枝で、偽葉とよばれる。葉は茎の各節部に、三角形の鱗片(りんぺん)状に退化しており、茎が成長すると自然に脱落する。雌雄異株で、夏に鱗片葉の葉腋(ようえき)に1~2個の黄白色の花をつける。花弁は6枚、筒状で全開しない。夏から秋にかけて雌株に直径7~8ミリメートルの緋紅(ひこう)色の球形の果実をつける。秋に地上部は枯れる。

[星川清親 2019年3月20日]

栽培

早春に種子をまいて、1年間育苗し、翌春、芽が出る前に定植する。収穫は播種(はしゅ)後3年目ごろ、食用にできる太い若芽が出るようになってから可能である。一度植えれば、10年間ぐらいは同じ株から収穫することができる。雄株は雌株に比較して、若茎の発生数が2~5割程度多いが、逆に若茎の太さは雌株のほうが雄株の若茎より太くなる。栽培時に雌株と雄株を見分ける確実な方法がない。

[星川清親 2019年3月20日]

近縁種

アスパラガスの近縁種には、観賞用に栽培されるものが多い。もっとも広く栽培されるのはシノブボウキA. plumosus Baker var. nanus Nichols.で、装飾用の切り葉や鉢植え用に用いられる。一般にはプルモーサスの名でよばれることが多い。スギノハカズラA. sprengeri Regelは荒めの葉を四方に出して下垂し、吊鉢(つりばち)用に多く用いられる。タチボウキA. myriocladus Hort.は松葉状の小葉をつけ、高さ1~2メートルの低木状となる。大形の切り枝、温室観葉として用いられる。花壇の縁植えなどに利用されるタチテンモンドウA. pygmaeus Makinoは高さは約20センチメートル、耐寒性に優れている。繁殖は春に株分けを行う。

[星川清親 2019年3月20日]

利用

日本へは18世紀にオランダから渡来したが、当時は観賞用として庭園に植えられた。明治初期にアメリカやフランスから再導入され、食用として栽培されるようになった。1923年(大正12)ごろから北海道で、缶詰用に軟白したホワイトアスパラガスの栽培が盛んになった。ホワイトアスパラガスは若芽が地上に出ないように地表から20センチメートル程度に土寄せをして、白く軟らかな地中の若芽を収穫するものである。土寄せをせず、地上に伸ばした緑の若芽を収穫するグリーンアスパラガスは1955年(昭和30)ころから市場に出回るようになった。主産地は、北海道、長野、佐賀、長崎、熊本の各県である。

[星川清親 2019年3月20日]

料理

アスパラガスはタンパク質含量の高い野菜で、とくにアミノ酸の一種アスパラギンの多いことが特徴である。栄養的にはグリーンアスパラガスのほうがホワイトよりも優れ、ビタミンCやカロチンの含量がはるかに高い。なお、缶詰製品にある特有の香気は、含硫化合物やアミノ酸が分解して生じるものである。

 グリーンアスパラガスは、サラダやバターいためのほか、グラタンなどに用いる。熱いうちにレモン汁やバターを添えてもよく、ホワイトソースもよくあう。ごまや、からしじょうゆで和(あ)えたり、煮物のあしらいなど、和風にもよい。新鮮さが勝負なので、生きのよいものを求め、手早く調理することが肝心である。ホワイトアスパラガスは、八百屋の店頭に出ることは少なく、大部分は缶詰、瓶詰に加工されて市販される。そのままでサラダや付け合わせに用い、またフライ、グラタン、スープの実などにも使う。穂先がとくに賞味されるので、調理にはこの部分を傷めないように、たとえば缶詰は底のほうをあけて中身を取り出すなどの注意が必要である。

[星川清親 2019年3月20日]


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改訂新版 世界大百科事典 「アスパラガス」の意味・わかりやすい解説

アスパラガス
Asparagus

旧世界の熱帯~温帯に約150種を産するユリ科の多年草の1属(和名クサスギカズラ属)で,茎はときには木本化する。葉は通常退化的で鱗片状となり,光合成は緑色の短縮した小枝(仮葉)が行う。花は小さくて目だたず,果は液果で紅熟する。いくつかの種が野菜用,観賞用として利用される。日本には7種が自生する。

食用のアスパラガス(オランダキジカクシ,マツバウドともいう)A.officinalis L.(英名はcommon asparagus,garden asparagus)はヨーロッパから西アジア地域原産の多年草で,日本へは1781年(天明1)以前にオランダ人によって観賞用として長崎に伝えられ,1871年開拓使によって食用として再導入された。叢生(そうせい)する茎は1~2mの高さに直立,上部でよく分枝する。葉のように見えるのはこの分枝した小枝につく葉状枝(仮葉)である。雌雄は異株,枝の節に鐘形,黄白色の花をつける。ほとんどの品種はアメリカからの導入種であるが,〈瑞洋(ずいよう)〉は日本で育成された。当初,瓶詰,缶詰の加工用は盛土して軟白させる軟化(ホワイト)栽培であったが,近年青果用として土を盛らないグリーン栽培が多くなり,普通栽培に加えて,トンネル利用の早出し栽培,温床利用の促成栽培が行われている。種子繁殖が有利であり,一度定植すると10~15年は収穫ができる経済的な永年性の野菜である。雄株が雌株より収量が多い。日本では全国で栽培されているが,おもな産地は北海道,東北地方,長野県である。グリーンアスパラガスは幼茎が25cmぐらいに伸びたころ収穫し,ホワイトアスパラガスは盛土の上に頭部をだす直前の幼茎を収穫する。ゆでて食べるほか,サラダ,いためもの,スープの実などに利用する。ビタミン類,アミノ酸を豊富に含む。アスパラギンは最初にこの植物から発見された。
執筆者:

アスパラガスで,観葉植物として鉢物や切葉で利用される種は多い。多くは温室で栽培されるが,おもなものとして,次のような種がある。

 シノブボウキA.plumosus Baker var.nanus Nichols.(英名はasparagus fern)はつる性,繊細な仮葉を密生し,二~三年生株は鉢物として観賞されるほか,切葉にも使われる。スギノハカズラA.sprengeri Regel.は高さ1~2mとなりよく分枝し,小枝は十字状に対生し,仮葉は線形で扁平,黄緑色で光沢がある。クサナギカズラ,通称スマイラックスA.medeoloides Thunb.(英名smilax)はつる性で仮葉は小卵円形で互生する。白色小花をつけ香りがよい。以上のほか,ヤナギバテンモンドウA.falcatus L.やタチテンモンドウ(別名タチボウキ)A.myriocladus Hort.なども多く栽培される。日本の暖地海岸草原からインドシナ半島にかけて分布する半つる性のクサスギカズラA.cochinchinensis (Lour.) Merr.の紡錘根は天門冬(てんもんどう)と称し,漢方薬で咳止め,強壮薬とされる。またクサスギカズラ属の野生種には,若芽や根を食用にしたり薬とするものが多い。
執筆者:

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食の医学館 「アスパラガス」の解説

アスパラガス

《栄養と働き》


 南ヨーロッパ原産のアスパラガスは、西洋ウド、オランダキジカクシとも呼ばれ、栽培法のちがいによってホワイトとグリーンの2種類があります。発芽後に盛り土をして栽培するのがホワイトアスパラガス、そのまま日にあてて育成するのがグリーンアスパラガスです。
 旬(しゅん)は春から初夏で、わが国では北海道、長野県がおもな生産地ですが、最近はメキシコやアメリカからの輸入ものも四季を問わず出回っています。
〈新陳代謝を活発にするアスパラギンを含むのが特徴〉
○栄養成分としての働き
 栄養的にはホワイトよりもグリーンのほうがすぐれていて、たんぱく質、ビタミン、ミネラルをバランスよく含んでいます。とくに体内でアスパラギン酸というアミノ酸にかわるアスパラギンを多量に含んでおり、この成分が新陳代謝を活発にしてたんぱく質の合成を助ける働きをします。その結果、滋養強壮や体力回復、美肌に効果を発揮します。このアスパラギンは芽の部分に集中的に含まれていて、アスパラガスの芽がよく成長するのもそのためだといわれています。
 また、アスパラギンは免疫力を増強させて細胞を正常な状態に回復させる力もあるとされ、アメリカではがんの予防・治療に応用する研究が行われているといいます。
 活性酸素の発生を抑えるビタミンEも豊富で、加えて毛細血管を丈夫にするルチン(フラボノイド化合物の1つで、ビタミンPと呼ばれることもあります)も多く含むので、動脈硬化症や高血圧症の予防に役立ちます。

《調理のポイント》


 ゆでて調理することが多いのですが、水溶性ビタミンを失ってしまうので、焼いたり揚げたりといった調理法がおすすめです。
 カロテン、Cと合わせてとることで抗腫瘍作用(こうしゅようさよう)も期待できるので、これらの成分を多く含む食品といっしょに食べるといいでしょう。
 選ぶときは、茎が太くて緑色が濃く、つやのあるものを。切り口に変色がなく乾燥していないことも選ぶときのポイントです。また、輸入ものよりも国産もののほうがたんぱく質、ビタミンC、カリウムなどのミネラル類の含有量が高いという報告もあります。旬の時季にはなるべく国産ものを選んだほうがいいでしょう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アスパラガス」の意味・わかりやすい解説

アスパラガス
Asparagus officinalis

ユリ科の多年草。オランダキジカクシまたはマツバウドとも呼ばれ,南ヨーロッパ原産。ヨーロッパでは紀元前から食用に栽培されていた。地下の根茎から毎春高さ 1m内外の茎を出す。葉は退化して白色の微小な膜状となり,細かい緑色松葉状の小枝が茂り,この枝で光合成を行う。雌雄異株で,花は白緑色,小さい鐘形で葉脈に下垂し,紅色球形の果実を生じる。若い茎は太くて軟らかいので食用にされる。同属の植物には観賞用に栽培される数種のアスパラガスがあり,なかでも生け花などに添えるシノブボウキ A. plumosus,鉢植にされるスギノハカズラ A. sprengeriや,クサナギカズラ (→スマイラックス ) などが有名である。またタチテンモンドウ A. pygmaeusは花壇のへりなどに植えられる。日本の暖地の海岸に自生するクサスギカズラ A. cochinchinensisはその塊根を蒸して乾かしたものを生薬の天門冬 (てんもんどう) といい咳止め,利尿に効能がある。

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百科事典マイペディア 「アスパラガス」の意味・わかりやすい解説

アスパラガス

ユリ科の一属Asparagusの多年草で,木性のものもあり,旧世界の温帯,熱帯の雨量の少ない地方に150種ほど,日本にもクサスギカズラなど数種を産する。多くは観葉植物として温室栽培され,切葉にもする。葉に見えるものは枝の変形したもので仮葉といい,花は小さく6弁,実も小型で球形。スギノハカズラは仮葉が線形で下垂する。シノブボウキはつる性で,線形の仮葉が集まり三角形に見える。タチテンモンドウ(タチボウキとも)は立ち性で2mほどになる。ヤナギバテンモンドウはつる性。食用のアスパラガスはマツバウドともいい,原産地のヨーロッパでは紀元前から栽培され,その多肉質の若い茎を食べる。芽の出る前に土寄せして光を当てず白い状態で収穫したものが缶詰用のホワイトアスパラガスで,出芽後に光を当てて緑化させた若芽がグリーンアスパラガスである。ビタミン類,アミノ酸を豊富に含み,サラダ,いためものなどに利用。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「アスパラガス」の解説

アスパラガス[葉茎菜類]
あすぱらがす

関東地方、栃木県の地域ブランド。
主に宇都宮市・鹿沼市・下野市などで生産されている。ユリ科の多年草。若い茎を食用とし、土を被せ日光を遮って育てた白いものをホワイトアスパラガス、日を当てて、普通に育てた緑色のものをグリーンアスパラガスと呼ぶ。疲労回復に効果が高いとされるアスパラギン酸は、アスパラガスに多く含まれていることから名づけられたもの。夏場には1日で10cmも伸びる。ハウス栽培などにより、出荷時期は2月上旬〜10月下旬まで。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報

栄養・生化学辞典 「アスパラガス」の解説

アスパラガス

 [Asparagus officinalis var. altilis].ユリ目ユリ科アスパラガス属の多年草.若い茎を食用にする.

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デジタル大辞泉プラス 「アスパラガス」の解説

アスパラガス

株式会社ギンビスが販売するビスケットの商品名。スティック状になっており、黒ゴマが練り込まれている。

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世界大百科事典(旧版)内のアスパラガスの言及

【ヨシ(蘆∥葭∥葦)】より

… ヨシ類の茎は葭簀(よしず)や簾(すだれ)にするほか,屋根や編んで壁などにも使われることがある。若芽は食用になり,アイヌ人が用いるほか中国でも蘆筍(ろしゆん)と呼ばれ用いられた(ただし,近年台湾で蘆筍といって缶詰にして輸出するものはアスパラガスである)。茎は他の大型のイネ科植物,例えばムラサキススキやススキ等のそれとともにパルプ原料に用いられ,良質の紙ができるが,解離がややむつかしいという。…

※「アスパラガス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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