日本大百科全書(ニッポニカ) 「アデノシン二リン酸」の意味・わかりやすい解説
アデノシン二リン酸
あでのしんにりんさん
すべての生物に存在する化学物質で、アデニン、リボース、2分子のリン酸より構成される。ADP(adenosine diphosphate)と略記する。ADPはATP(アデノシン三リン酸)から1分子のリン酸が失われたものであり、ATPの分解産物であるが、同時にATP補給のための材料として重要である。たとえばミトコンドリアでは、食物を簡単な物質に分解していくときに放出されるエネルギーを利用して、また葉緑体では光のエネルギーを利用して活発にADPのリン酸化が行われ、ATPが生産されている。このようにADPは、いろいろな形で存在していたエネルギーをとらえて新しくつくられるATPのなかに固定し、生物が有効に利用できるようにする役割をもつ。ATPからADPとリン酸への加水分解は、高エネルギーの放出を伴い、生物はこのエネルギーを利用して、筋肉の収縮などさまざまな仕事を行う。
[笠井献一]