翻訳|adenine
核酸塩基の一種。窒素を含む5員環と6員環が縮合したプリンの誘導体で、6-アミノプリンの構造をもつ。生物から得られる塩基性物質で、生体中に核酸、ADP(アデノシン二リン酸)、ATP(アデノシン三リン酸)などの構成成分として含まれており、遊離した形で存在することはほとんどないが、まれに茶の葉などにみいだされる。DNA分子内では、チミンとの間に相補的塩基対を形成し、二重螺旋(らせん)構造を安定化している。RNA分子中では、ウラシルとの間に相補的塩基対をつくる場合がある。またFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)、FMN(フラビンモノヌクレオチド)、NAD(ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド)、NADP(ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸)、補酵素Aなど、生体内の重要な反応に関係する補酵素の構成成分である。
冷水には溶けにくいが、酸や塩基にはよく溶ける。エーテルやクロロホルムには溶けない。塩酸中で180~200℃に加熱すると分解する。亜硝酸を作用させるとヒポキサンチンになる。酸化すると尿素を生成する。酸および塩基と塩をつくる。
[笠井献一]
6-aminopurine.C5H5N5(135.13).核酸の一成分で,核酸を加水分解すると得られる.チオ尿素とマロノニトリルから4,5,6-トリアミノ-2-チオピリミジンとし,これからプリン環を形成して段階的に合成するか,シアン化水素とアンモニアから直接合成する.三水和物C5H5N5・3H2Oは針状結晶.110 ℃ で無水物となる.220 ℃ で昇華,360~365 ℃ で分解する.熱水に可溶,エーテル,クロロホルムに難溶,酸,アルカリに可溶.水溶液は中性を示す.λmax 263 nm(ε 13.0×103,pH 2水溶液).亜硝酸と反応してヒポキサンチンとなる.[CAS 73-24-5]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…通常この三つ組(トリプレットtriplet)は,塩基の頭文字をとったアルファベットの4文字(A,U,G,C)を三つ並べて表記する。A,U,G,Cはそれぞれ,アデニン,ウラシル,グアニン,シトシンを表し,1個のコドンは1個のアミノ酸または読み終りの信号(句読点のようなもの)に対応する。遺伝暗号表の読みかたは,三つ組塩基の左側から,1番目,2番目,3番目とし,UUUというコドンなら,左上端のフェニルアラニン(Phe)というアミノ酸に対応することがわかる。…
…DNAでは糖の部分が2‐デオキシ‐D‐リボース(2‐deoxy‐D‐ribose)であるのに対して,RNAのそれはD‐リボース(D‐ribose)である。さらにDNAの塩基はアデニンadenine(Aと略す),グアニンguanine(G),シトシンcytosine(C),チミンthymine(T)の4種からなるが,RNAの場合はチミンの代りにウラシルuracil(U)が用いられる(図2)。DNAもRNAもこれら4塩基がいろいろな順序で多数配列した巨大分子であり,場合によってはこれら塩基に特殊な修飾の加わった(例えばメチル化された)微量塩基が少量存在することもある。…
…生体中で核酸の構成成分,あるいは低分子化合物として機能する。アデニン,グアニン(少量存在するものとしてはヒポキサンチンおよびそのリボヌクレオシドであるイノシンなどがある)はピリミジン塩基(シトシン,チミン,ウラシル)とともに核酸の重要な構成成分である。アデニンはATP,NAD,FADなどの補酵素の構成成分でもある。…
※「アデニン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新