アマゴ(読み)あまご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アマゴ」の意味・わかりやすい解説

アマゴ
あまご / 甘子

[学] Oncorhynchus rhodurus

硬骨魚綱サケ科に属する魚。日本特産の渓流魚で、アメノウオ、アメゴ、ヒラメ、キンエノハなどの地方名もある。その本来の分布生息域は本州では酒匂(さかわ)川以南の太平洋沿岸、瀬戸内海沿岸の河川、四国の河川および大分県の瀬戸内海沿岸の河川の渓流域であるが、現在、増養殖に伴う移殖の結果として本州、九州の日本海側の河川にも分布が広まっている。体形はサクラマスの幼魚ヤマメ)とよく似ており、背部は帯緑褐色で小黒点があり、腹側は銀白色、体側にはサケ・マス類の幼魚特有の小判形のパーマークとよばれる斑紋(はんもん)をもつ。しかしヤマメと異なって側線の上下に鮮麗な朱赤点が散在し、この数や濃淡には地方によってかなり差異がある。伊勢(いせ)湾、瀬戸内海などに注ぐ河川の上流では、晩秋に体色が銀白化する現象(銀毛化またはスモルト化)がおこり、いわゆるシラメとよばれる姿となって初冬のころ降海し、翌年初夏まで沿岸域を回遊、急速な成長をして成熟したマスとなり、盛夏の前に溯上(そじょう)する。木曽(きそ)三川の中・下流では、これをカワマスとよぶ。なお成熟したマスの体形に達しても朱赤点は消失しない。

 湖沼生活型のものとして琵琶(びわ)湖のビワマス諏訪(すわ)湖のアメがある。ビワマスの場合、成長に伴って朱赤点が消失し、また幼魚の銀毛化が著しく早い点、さらに近年の生化学的研究の結果などからアマゴとまったく同一の魚種とする考え方には疑問が出ている。アマゴの餌(えさ)の大部分は水生昆虫と落下陸上昆虫であり、10月下旬をピークとして、おもに流れの緩い平瀬の砂礫(されき)下に産卵する。渓流釣りの対象として価値が高く、またきわめて美味である。近年その養殖技術が著しく進み、民間企業でも集約的養殖をしているところが多い。とくに本州の各河川の漁業協同組合アユ、ヤマメとあわせてアマゴの河川放流を行う所が増えている。

[久保達郎]


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改訂新版 世界大百科事典 「アマゴ」の意味・わかりやすい解説

アマゴ

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世界大百科事典(旧版)内のアマゴの言及

【琵琶湖】より

…ニゴロブナとゲンゴロウブナ,ホンモロコ,ビワコオオナマズとイワトコナマズ,イサザがそれで,それぞれ日本各地に広く分布するキンブナ,タモロコ,マナマズ,ウキゴリから,琵琶湖の広い沖帯を利用すべく進化したものである。またビワマスはアマゴとはすでにかなり異なっているし,アユ,カジカ,ヨシノボリも琵琶湖にすむものと他水域のものとはいくらか違っている。これらは現在種分化の途中にあるものであろう。…

【ビワマス(琵琶鱒)】より

…サケ目サケ科の淡水魚。ビワマスは湖沼型で河川型としてアマゴがいる。天然のものは琵琶湖にだけ分布するとされているが,移殖により諏訪湖,中禅寺湖などにも見られる。…

※「アマゴ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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