日本大百科全書(ニッポニカ) 「アメリカ預託証券」の意味・わかりやすい解説
アメリカ預託証券
あめりかよたくしょうけん
American Depositary Receipts
略称ADR。一般に預託証券とは、ある国の企業の株式を見返りに、外国の投資家に発行・売買される国際的流通証券で、株式の国際版である。海外の株式を国内市場で売買するには、言語、法律、制度、取引慣習などの相違による障害があるほか、輸送をはじめとする種々のリスク、費用などを伴うので、それらを除去し、海外の株式を国内市場で同等に扱おうとする制度で、ADRはアメリカ国内で外国株式にかわって取引される代替証券、身代り証券のことである。この場合、海外の株式はその発行国の銀行に保管され、アメリカの銀行がADRを発行し、アメリカ国内の流通市場で取引する。この制度は、1927年にモルガン・ギャランティ・トラストによって創設されたもので、日本のADRとしては、1961年(昭和36)のソニーをはじめとして、現在までに150銘柄以上に上っている。ADRの発行は、その原株発行会社にとって、優良企業としての国際的評価、資金調達の多様化、PR効果と市場確保などのメリットがある。ほかに同様な制度として、ヨーロッパ預託証券(EDR)、ロンドン預託証券(LDR)、ドイツ無記名証書(GBC)などがある。
従来、ADRを含む預託証券は、日本の法制上、有価証券として定義されていなかったが、1998年(平成10)の証券取引法改正によって、外国投資証券として有価証券に定義されることになった。2007年9月には証券取引法を改正した金融商品取引法が施行され、現在は金融商品取引法の適用を受けている。
[村本 孜]
なお、2007年(平成19)11月、東京証券取引所は、日本預託証券(JDR)の上場制度を創設した。
[編集部]