イラン語派(読み)イランごは(その他表記)Iranian

翻訳|Iranian

精選版 日本国語大辞典 「イラン語派」の意味・読み・例文・類語

イラン‐ごは【イラン語派】

  1. 〘 名詞 〙 インド‐ヨーロッパ語族に属する諸言語で、インド‐アーリア諸語とともにインド‐イラン語派を構成する。最古層はゾロアスター教の聖典アベスタに書かれてあるアベスタ語古代ペルシア語。後者が中古ペルシア語を経て現代ペルシア語となる。この現代ペルシア語のほか、クルド語オセット語アフガン語などが含まれる。

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改訂新版 世界大百科事典 「イラン語派」の意味・わかりやすい解説

イラン語派 (イランごは)
Iranian

インド・ヨーロッパ語族の一語派で,その最古層ではインド語派にきわめて近く,インド・イラン語派Indo-Iranianとして未分化の一時期をもったことを想定させる。独立の語派としての歴史は,古代イラン語,中期イラン語近代イラン語の3期に分けられる。

(1)古代イラン語として知られているのは,ゾロアスター教の聖典アベスターの言語,およびアケメネス朝ペルシア楔形文字碑文を記した古代ペルシア語である。アベスター語Avestanは,古代インドのベーダ語と同様,動詞,名詞の活用に古形をよく保っている。方言的には東部の特徴を示すが,特定の地方をその故郷と断定することはできない。その最古の部分は預言者ゾロアスター自身の作の詩頌(ガーサー)だが,彼の生存年代も学者により前十数世紀から前7世紀まで意見が分かれる。古代ペルシア語Old Persianは,イラン南西部ファールス地方の方言で,前6世紀から前4世紀にかけて古代ペルシア帝国の歴代の王(ダレイオスクセルクセス,アルタクセルクセス)の詔勅に用いられた。また最近ペルセポリスの遺跡から,前6世紀末から前5世紀前半に属する古代ペルシア語の人名を数多く含むエラム語の粘土板文書が大量に発見されている。

(2)中期イラン語として知られているものには,西部方言としては中期ペルシア語とパルティア語東部方言では,ソグド語サカ語ホラズム語バクトリア語がある。中期ペルシア語は古代ペルシア語と同じく南西イランの方言で,ササン朝ペルシア(3~7世紀)の公用語として,碑文,ゾロアスター教の宗教文学(パフラビー文献),およびマニ教の文献に用いられた。このうち量的に最も多いのは,主として9世紀になってから書かれたパフラビー文献(パフラビー語)だが,20世紀になって中央アジアから発見されたマニ教文献(3~10世紀)は,その正確な表記法のゆえに言語学的に重要である。イラン北部,カスピ海南東地域の方言であるパルティア語Parthianは,アルサケス朝(前3~後3世紀)の公用語であり,この時代の陶片,皮革文書などのほか,ササン朝初期の碑文,および中央アジア出土のマニ教文献に用いられている。残余の4種の東部方言はすべて20世紀になって発見された。ソグド語は,サマルカンドとブハラ(ウズベキスタン共和国)の2都市を本拠地とするが,中央アジアの通商用語として広く行われ,4~10世紀に属する碑文や手紙類がモンゴリアを含む中央アジア各地から出土しているほか,仏教,マニ教,ネストリウス派キリスト教の写本が敦煌とトゥルファンの遺跡から発見されている。サカ語Sakaは,タリム盆地南西辺のホータンと北西辺のトゥムシュクの二つの方言によって知られており,7~10世紀に属する写本は大部分が仏教系で,ホータン周辺と敦煌から大量に出土した。ホラズム語Khwarizimianは,アラル海南岸のホラズムの地の言語で,2~7世紀の少数の貨幣銘と短い碑文のほか,主として13世紀のアラビア語の書物に引用された文句から知られている。バクトリア語Bactrianは,アフガニスタン北部で発見された25行のギリシア文字で書かれた碑文がおもな資料である。

(3)近代イラン語も,音韻的特徴から東部グループと西部グループに分けられる。文学的伝統をもつ重要な言語としては,アフガニスタンのパシュト語と,地理的には西のカフカスに位置するオセット語が東部グループに属し,ペルシア語タジク語クルド語,およびバルーチ語が西部グループに数えられる。これらのうちの最初の4言語は,それぞれが話されている国家の公用語として認められている。さらにこれに加えて,イラン,アフガニスタン,およびこれと境を接するソ連の地域に数多くのイラン系の言語,方言が行われており,特にパミール高原を中心とする地域の諸言語は,言語学的に古い形をとどめているものが多く,貴重である。
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百科事典マイペディア 「イラン語派」の意味・わかりやすい解説

イラン語派【イランごは】

インド・ヨーロッパ語族に属する語派の一つ。古層はインド語派との類似が著しい。アベスター語と,古代ペルシア帝国の諸王の残した楔形(くさびがた)文字碑文を最古の文献とする。前4世紀ごろから中期に移行し,東西2方言の系統がみられる。現在は近代ペルシア語(ファールシー)を中心に,パシュト語クルド語オセット語,タジク語,パミール高原の小言語群などからなる。→インド・イラン語派
→関連項目ソグド語

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世界の主要言語がわかる事典 「イラン語派」の解説

イランごは【イラン語派】

インドヨーロッパ語族の一語派インド語派と近縁で、インドイラン語派からそれぞれに分化したと想定される。古代イラン語には、ゾロアスター教の聖典『アベスタ』の言語であるアベスタ語や、アケメネス朝ペルシアの古代ペルシア語があり、前者はインド語派のベーダ語ときわめて近い特徴をもつ。中期イラン語には、ササン朝ペルシアの中世ペルシア語、パルティア語、ソグド語、ホラズム語、バクトリア語、サカ語があり、それらの文献や碑文(ひぶん)が各地に知られる。近代イラン語には、ペルシア語、タジク語、クルド語、パシュトー語、バルーチ語、オセット語などがあり、西アジアから中央アジアにかけて分布している。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イラン語派」の意味・わかりやすい解説

イラン語派
イランごは
Iranian languages

インド=ヨーロッパ語族の一語派。インド=アーリア語派とともにインド=イラン語派をなす。古期イラン語と呼ばれるものは,アベスタ語と,アケメネス朝諸王の碑文の古期ペルシア語とであり,アベスタ語はサンスクリット語とよく似ている。前3~後 10世紀の言語は中期イラン語といわれ,古期ペルシア語に近い中期ペルシア語,アベスタ語に近いパルチア語,バクトリア語,ソグド語,サカ語などがある。 10世紀以降の近代イラン語のなかで最も重要なのは近代ペルシア語で,イラン,アフガニスタンなどで用いられる。ほかに,クルド語,オセト語,パシュト語など多くの言語に分れ,西アジアの広い地域に分布して,約 5000万人の話し手をもつ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イラン語派」の意味・わかりやすい解説

イラン語派
いらんごは

インド・イラン語派

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