改訂新版 世界大百科事典 「エラム語」の意味・わかりやすい解説
エラム語 (エラムご)
Elamite
膠着語の特徴をもった系統不明の古代オリエント諸言語の一つ。シュメール語,フルリ語,カッシート語,原ハッティ語などとともに一括してカフカス語とかカスピ語,ヤペテ語と呼ばれ,これらの諸言語を話したオリエントの古代住民は人種的にアジアニックと総称されている。しかし,これらが共通な語族を形成していたかどうかは,まだ十分に証明されていない。エラム語の文法は,資料が限られているという制約もあって,不明の部分が少なくない。音素としては,p,t,k,h,š,s,č,m,n,r,y,l,i,u,aが区別される。動詞は人称接尾辞(一,二,三人称の単数および複数)を有する。また,動詞語幹の重複形や拡張形,あるいは接辞をともなった語形がみられるが,そのうちのあるものは動詞のアスペクトや叙法の機能をなんらか示していたことが想定されている。名詞,形容詞,分詞,そのほか不定詞や否定詞をふくむ若干の語も人称接尾辞をとるが,動詞の人称接尾辞とはかならずしも一致せず,とくに三人称において生物体(単数および複数)と非生物体とを区別していることが特徴的である。エラム語を表記する文字として前4千年紀末に原エラム文字が成立し,絵文字から線文字への発達がみられたが,前24世紀以来アッカド楔形文字の導入によって,エラム文字はまもなく消滅した。エラム語はアケメネス朝ペルシア帝国において碑文用語の一つとしてなお重視され,ペルセポリス王宮からも多数のエラム語経済文書が出土している。
執筆者:佐藤 進
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報