イージス艦(読み)イージスカン(英語表記)Aegis

デジタル大辞泉 「イージス艦」の意味・読み・例文・類語

イージス‐かん【イージス艦】

Aegis destroyer》目標の捜索・探知から情報処理攻撃までを自動処理する高性能対空ミサイルシステムを搭載した軍艦。

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共同通信ニュース用語解説 「イージス艦」の解説

イージス艦

高性能レーダーを搭載し、探知した敵の航空機やミサイルなどの情報を大型コンピューター瞬時に処理して多数の目標に同時対処できる能力を持つ艦艇。名前の「イージス」はギリシャ神話で女神アテナの防具に由来する。日米が共同開発した改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」も搭載する予定で、米国主導のミサイル防衛網の中核を占める。米軍は横須賀基地(神奈川県横須賀市)にも配備。米国で開発され、海上自衛隊も7隻を保有する。(ワシントン共同)

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精選版 日本国語大辞典 「イージス艦」の意味・読み・例文・類語

イージス‐かん【イージス艦】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] Aegis destroyer から ) 目標の捜索・探知から情報処理、攻撃までを自動処理する高性能対空ミサイルシステムを搭載した軍艦。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イージス艦」の意味・わかりやすい解説

イージス艦
いーじすかん
Aegis

航空機とミサイルの同時多数攻撃に対応するイージス・システムAegis Systemを装備した艦艇のこと。1963年アメリカの国防長官マクナマラは、艦艇用ミサイルシステム(ASMS=Advanced Surface Missile System)を承認し、それに伴い、米海軍は1983年に最初のイージス艦を就役させた。イージス艦は約200目標の同時追尾ができるフェーズド・アレイ・レーダー(位相配列レーダー)を装備し、武器管制システムはコンピュータで統制されており、目標探知、ミサイル発射および結果の評価は自動的に行われる。前後甲板の垂直発射装置(VLS=Vertical Launching System)には射程約70キロメートルのセミアクティブ・レーダー・ホーミング艦対空ミサイルが搭載されており、在来艦の4倍以上の16または18の目標を同時に攻撃可能であるといわれている。VLSには射程約9キロメートルの対潜ロケット(ASROC=Anti-Submarine Rocket)や巡航ミサイルも装填(そうてん)することができる。その他、発射速度毎分3000発の6砲身ガトリング砲が、近接防御火器システム(CIWS=Close in Weapon System)として搭載されているほか、射程約15キロメートルの5インチ砲、射程100キロメートルを超える艦対艦ミサイルも搭載されている。防衛庁(現防衛省)は洋上防空体制の中枢を担うものとして1987年(昭和62)に導入を決定。システムを輸入し、国産護衛艦に搭載されることになり、1993年(平成5)3月、その一番艦「こんごう」(7250トン)が竣工した。2010年(平成22)時点で「こんごう」型イージス艦4隻(「こんごう」「きりしま」「みょうこう」「ちょうかい」)、「あたご」型イージス艦(7750トン)2隻(「あたご」「あしがら」)が配備されている。また、2007年12月には、「こんごう」に搭載されたスタンダード・ミサイル(SM-3)の発射実験がハワイのカウアイ島沖で行われ、高度100キロメートル以上の大気圏外を飛行する標的ミサイル1発の迎撃に成功した。2008年11月には、「ちょうかい」がカウアイ島沖でSM-3の発射試験を行ったが、SM-3の弾頭部分の不具合により標的ミサイルには命中しなかったものの、BMD(弾道ミサイル防衛)システムが正常に作動していることが確認された。2009年10月には、「みょうこう」が弾道ミサイル迎撃実験を行い、事前通知のない条件下で標的ミサイルの捕捉・追尾・迎撃に成功している。2010年末時点で、イージス艦は米海軍および海上自衛隊のほか、韓国、ノルウェー、スペインの各海軍により運用されている。なお、イージスとはギリシア神話に登場する戦争の女神アテナの盾である。

[村井友秀]

『金田秀昭著『ミリタリー選書27 BMD<弾道ミサイル防衛>がわかる――突如襲い来る弾道ミサイルの脅威に対抗せよ』(2008・イカロス出版)』『柿谷哲也著『イージス艦はなぜ最強の盾といわれるのか――圧倒的な防空能力をもつ戦闘艦の秘密』(サイエンス・アイ新書・ソフトバンククリエイティブ)』


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知恵蔵 「イージス艦」の解説

イージス艦

「こんごう型」は基準排水量7250t、満載時9485t、建造費約1200億円という大型で高価な護衛艦。射程120kmのSM2MR対空ミサイル74発を搭載、同時に12発以上のミサイルを別々の目標(攻撃機や対艦ミサイル)に誘導できる。従来の対空ミサイル艦が射程30km余のミサイルを最大で同時に2発しか誘導できなかったのに比べ、能力は大幅に向上し、弾道ミサイルの監視にも活躍、弾道ミサイルに対抗する海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載する計画で、「こんごう型」4隻に加え、満載排水量1万tの「あたご型」1隻が07年に就役、他に1隻を建造中。

(田岡俊次 軍事ジャーナリスト / 2008年)

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百科事典マイペディア 「イージス艦」の意味・わかりやすい解説

イージス艦【イージスかん】

総合的兵器システム〈イージスAegis〉を搭載した護衛艦。200以上の目標を同時追跡でき,20程度の目標を同時に攻撃できるという近代的装備の大型艦(基準排水量7200トン)。海上自衛隊は米国からこのシステムを購入したが,艦体は国産で総費用約1500億円という高価さ。中期防衛力整備計画(2001年-2005年)で,海上自衛隊はイージス艦をすでに4隻就役させているが,この高価な艦で何を守るのかという疑問が出ている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イージス艦」の意味・わかりやすい解説

イージス艦
イージスかん
AEGIS

1980年代初頭,米海軍で開発された同時多目標対処能力を有する防空システム艦。イージス艦は,同時・異方向・多数機による敵航空機の攻撃に対処するため,全周広域の対空監視機能,多数目標の同時解析攻撃諸元取得機能,ならびに対空ミサイルの高速度発射機能を備えるとともに,艦隊全般の防空作戦を指揮・管制する防空中枢艦機能を持つ。このため,大型高性能のフェーズドアレイレーダ,大容量,高速処理可能なコンピュータおよび垂直ミサイル発射装置から発射される長距離対空ミサイルから構成される。

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