アメリカの写真技術者。ロチェスターの公立学校を卒業し、保険会社や銀行に勤める。ニエプス、ダゲールの写真創始以来、感光板は石板石、ガラス、金属板などで重くて取扱いに不便であった。1880年イーストマンは写真乾板の製法を開始し、1884年には初めてニトロセルロースフィルムにゼラチン臭化銀乳剤を塗布した現代のようなフィルムをつくった。またターナーSamuel N. Turnerの発明したロールフィルムの日中装填(そうてん)カセットの特許を買いザ・コダックを売り出し、一般アマチュアに普及した。「あなたはシャッターを押すだけ、あとはお任せください」という宣伝で、そのイーストマン・コダック社は世界に雄飛した(その後、デジタル化への対応の遅れなどにより、2012年1月米連邦破産法第11条の適用を申請した)。有名な慈善家の一人で、財産の多くを大学や病院に寄付した。輝かしい成果を収めたイーストマンは、不治の病に気がつくや壮烈な自殺を遂げた。
[菊池真一]
アメリカの発明家,企業家。イーストマン・コダック社の創立者で,写真感光材料の製造と写真の一般アマチュアへの普及に大きい功績があった。ニューヨーク州ウォータービルの生れで保険会社に勤めていたが,1880年写真乾板の製造プロセスを完成させイーストマン乾板会社を設立,84年には紙製ロールフィルムを発売し,88年にはこのフィルムを定焦点ボックスカメラ(コダック・カメラ)に収めて発売し,写真がアマチュアにも楽しめる時代を招いた。92年にはイーストマン・コダック社を創立,引き続きセルロイドを支持体とするフィルム,映画用フィルムを発売したのち,1913年にはX線用フィルムを完成した。その後も小型映画,カラー写真をはじめ写真の全分野で先駆的事業を完成して同社を大企業に発展させ,写真の普及,利用に功績をあげた。教育事業,音楽活動にも尽力し,各国から叙勲,受賞の栄誉を受けたが,最後はピストル自殺により一生を閉じた。
執筆者:友田 冝忠
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… このように肖像というものは当時の写真の主要な表現主題であったが,大衆の要求に応えた大量の肖像写真は,社会史的に見れば,人々が写真そのものと親しみを深める役を果たし,絵画とは違う写真の特性についての知識の普及に役立った。のちに素人にも容易に撮れるイーストマン・コダック社の写真システムや,乾板,ロールフィルム等の普及によって誰にでも写真が撮れるようになったことから,営業的な肖像写真の需要自体は減少したものの,写真はいっそう身近なものとなり,写真画像の日常生活への浸透は急速に進むことになった。またフィルムの感光度がいっそう高くなりスナップ撮影(スナップ写真)が容易になると,瞬間的な表情や姿態が撮影できるようになったため,人々は肉眼ではとらえられぬもう一つの人間像を写真の上に見いだすことになった。…
…本社ニューヨーク州ロチェスター。1880年にG.イーストマンが個人経営で始めた乾板・フィルム製造会社が始まりである。88年にコダック・カメラ第1号機(携帯用カメラ)を発売,98年には近代カメラの第一歩となった蛇腹式折りたたみコダック・カメラを発売した。…
…70年代以降乾板の発明,その高感度化に伴い,穴をあけた木や金属板を落下,あるいはばねなどで作動させるギロチンシャッターや,後述のフォーカルプレーンシャッター,レンズシャッターといった基本的なシャッター方式がすべて開発された。88年,G.イーストマンは紙をベースにしたロールフィルムを用いるボックスカメラ,コダックを発売,ロールフィルムが本格化するとともに,1912年,イーストマン・コダック社(略称コダック社)から発売されたベスト・ポケット・コダック(日本では単レンズ付きのものがいわゆる〈ベス単〉の愛称で親しまれた)は大量生産された最初のカメラで,世界的ベストセラーとなった。 一方,映画の普及とともに,35ミリ映画フィルムをスチルカメラに転用する企画が相次いだが,ドイツの顕微鏡メーカー,ライツ社の技術者バルナックOskar Barnack(1879‐1936)が13年より試作を続け,25年にライカAとして発売されたカメラは,ダブルサイズと称する映画2コマ分の画面サイズ(36mm×24mm)を用い,今日の小型スチルカメラの始祖となったばかりでなく,マガジン入りのフィルムを使用し,フィルムを1コマ送ると同時にフォーカルプレーンシャッターを巻き上げる,いわゆるセルフコッキング方式をとっているなど,現代小型カメラの基本的要件を備えていた。…
※「イーストマン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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