ダゲール(読み)だげーる(英語表記)Louis Jacques Mandé Daguerre

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダゲール」の意味・わかりやすい解説

ダゲール
だげーる
Louis Jacques Mandé Daguerre
(1787―1851)

写真の発明者として知られるフランスの画家兼興行師。パリ郊外に生まれ、建築、絵画を学んだのち、パリ・オペラ座の舞台美術画家を経て、1822年にパリで、翌1823年ロンドンジオラマ館(人工的な照明の操作で景観が変化する大掛りな風景画の見せ物)を開業する。ジオラマに用いる風景画をカメラ・オブスキュラで描いていたが、その画像を手書きではなく化学的に定着することを思い立ち研究に着手(1824)。1829年、やはり光学像の定着を研究していたニエプスと提携し、ニエプスが創意したヘリオグラフィーを改良、彼の死後、銀めっき銅板沃化(ようか)銀を作用させ露光を与え、それを水銀蒸気で現像し食塩水で定着する、いわゆる銀板写真術を1837年に完成、自らの名を冠してダゲレオタイプと命名した。だが商品化の資力がなく、1839年、科学者にして政治家のアラゴを介し、年金と引き換えに学士院でその技術内容を公開した。これが実用的な写真術の始まりである。

[平木 収]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダゲール」の意味・わかりやすい解説

ダゲール
Daguerre, Louis-Jacques-Mandé

[生]1789.11.18. コルメイユ
[没]1851.7.10. ブリシュルマルヌ
フランスの画家,物理学者銀板写真法の開発で知られる。初め税務署の役人をしていたが,やがてオペラの背景画家となり,のち当時流行した見せ物であるディオラマ館をパリ,ロンドンに開設した。 1829年,J.ニエプスと共同で写真の研究に着手し,10年後,科学アカデミーに,ヨウ化銀を被膜した銅板を露光したのち,水銀蒸気を当てて食塩水で固定するという,画期的な写真法を発表した。このいわゆるダゲレオタイプ写真法によって従来の写真に比べてはるかに露光時間が短縮された。この功績によってレジオン・ドヌール勲章および年金を受けた。

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