ウィルチェック(読み)ういるちぇっく(英語表記)Frank Wilczek

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウィルチェック」の意味・わかりやすい解説

ウィルチェック
ういるちぇっく
Frank Wilczek
(1951― )

アメリカの理論物理学者ニューヨーク市生まれ。シカゴ大学数学科を卒業後、プリンストン大学で物理学博士号を取得。同大学準教授を経て1980年に教授。その後、カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校教授、プリンストン高等研究所教授などを経て、2000年からマサチューセッツ工科大学MIT)物理学科教授。

 シカゴ大学の名誉教授南部陽一郎らは、クォークが存在するには各粒子に「赤」「青」「緑」になぞらえた性質のどれかが必要であり、その作用は別の粒子で伝えられるという「量子色力学」を提唱したが、1973年ウィルチェックは、共同研究者であるグロスポリツァーとともに、その数式をさらに発展させ、クォークが離れるほど相互作用が強く働く漸近的自由の性質を理論的に説明できる数式を導き出した。この業績により2004年のノーベル物理学賞受賞した。

[馬場錬成 2018年6月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウィルチェック」の意味・わかりやすい解説

ウィルチェック
Wilczek,Frank

[生]1951.5.15. ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカの物理学者。シカゴ大学卒業後,1974年プリンストン大学でデビッド・J.グロスの指導のもと,物理学の博士号取得。以後プリンストン大学助教授,同大学教授,カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授を経て,1989年プリンストン高等研究所教授に就任。 2000年からマサチューセッツ工科大学教授。 1973年ウィルチェックは数学の枠組みを使って,クォーク間に働く「強い相互作用」がクォークの距離が遠くなるほど強くなり,近づくほど弱まる「漸近的自由」と呼ばれる状態を理論的に解明した。この計算によって,クォークが単独で取り出せない理由が理論づけられたほか,のちの量子色力学標準理論となった。 2004年グロス,H.デビッド・ポリツァーとともにノーベル物理学賞を受賞。

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