グロス(読み)ぐろす(英語表記)David J. Gross

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グロス」の意味・わかりやすい解説

グロス(David J. Gross)
ぐろす
David J. Gross
(1941― )

アメリカの理論物理学者。ワシントンDCの生まれ。1966年イスラエルのヘブライ大学卒業後にカリフォルニア大学バークリー校で物理学博士号を取得。プリンストン大学などを経て、1997年からカリフォルニア大学サンタ・バーバラ校カブリ理論物理学研究所教授

 物質根源を構成する素粒子の間には「強い力」「電磁力」「重力」「弱い力」が相互に作用して宇宙を支配している。素粒子はクォークレプトン軽粒子)という二つのグループに分けられるが、このうちクォークは、強い力が支配して結び付いていると考えられている。つまり、原子核を構成する陽子中性子は3個のクォークが強い力で固く結び付いているため、クォークを陽子や中性子の外に取り出そうとすると、強い力で引き付けられていて、外に取り出せない。1960年代から実験物理でこの結果が出されていたが、理論的に説明するのはむずかしかった。

 1973年に、ポリツァー、ウィルチェックらとともに、クォークは離れるほど互いに強い力が働くという性質があることを数式で導き出すのに成功した。これはクォークが近づくほど(漸近するほど)、力(相互作用)から自由になることを意味するものである。この「強い相互作用の理論における漸近的自由性の発見」により、三人は2004年のノーベル物理学賞を受賞した。

[馬場錬成]


グロス(12ダース)
ぐろす
gross

12ダース(つまり12×12=144)をいう。12グロスを大グロスgreat grossともいい、また10ダースを小グロスsmall grossともいう。語源はラテン語grossで、大きい量を意味している。なお、フランスでは、グロスgrossという質量単位が用いられたことがあり、地方によって違っていた。パリで用いられたグロスは8分の1オンスであり、約3.8グラムに相当している。

[小泉袈裟勝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グロス」の意味・わかりやすい解説

グロス
Gross,David J.

[生]1941.2.19. ワシントンDC
アメリカの物理学者。 1966年カリフォルニア大学バークリー校で物理学の博士号取得。ハーバード大学を経て 1969年プリンストン大学に移り,1972年から教授。 1997年カリフォルニア大学サンタバーバラ校カビル理論物理学研究所長に就任。物質を構成している最小の素粒子クォークの間に働く「強い相互作用」は,クォーク間の距離が離れるほど強くなり,近づくほど弱くなって「漸近的自由」と呼ばれる状態になる。 1973年グロスは数学の枠組みを使って漸近的自由を理論的に解明し,これはのちの新しい理論,量子色力学の標準理論となった。 2004年同じ理論を導き出したフランク・ウィルチェック,H.デビッド・ポリツァーとともにノーベル物理学賞を受賞。

グロス
Gross, Prosper Gambet

[生]1820.1.18. オーブ,ブリアンヌ
[没]1881.11.18. 東京
フランスの来日顧問。パリで法律を専攻し,司法官途につく。法学博士。ボナパルト派に属し,普仏戦争での敗北に失意をいだき,1873年来日,横浜で弁護士開業。その手腕を日本政府に認められ,76年5月,東京警視庁顧問に招聘され,以来5年間,治外法権に対抗する日本警察制度の確立に貢献するかたわら,フランス刑事法の講述を行なった。解任後も日本にとどまり,81年 11月病死。

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