日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポリツァー」の意味・わかりやすい解説
ポリツァー
ぽりつぁー
H. David Politzer
(1949― )
アメリカの理論物理学者。ハーバード大学で物理学博士号を取得。同大研究員などを経て、1979年からカリフォルニア工科大学物理学科教授。
1973年グロス、ウィルチェックと共同で、クォーク間には相互作用が関与しており、ある距離以上に離れようとすると強い作用が働くことを理論的に説明した。この理論によって、陽子や中性子からクォークを単独で取り出すことがきわめてむずかしいことがわかり、素粒子物理学の発展に大きく貢献した。さらにこの理論は、クォーク間に働いている強い相互作用に関する「量子色力学」という学問を発展させ、標準理論の一つの柱になった。この功績によりポリツァーはグロス、ウィルチェックとともに2004年のノーベル物理学賞を受賞した。
受賞に関するノーベル財団の解説資料では、シカゴ大学の名誉教授南部陽一郎の貢献に言及している。南部は1960年代の中ごろ、超伝導理論で使われている「自発的対象性の破れ」という概念を素粒子理論に導入した。この南部説に基づいた方程式を使って、クォークが離れるほど相互作用が強く働くことを示す数式を確立したことに触れたもので、ポリツァーらの業績は南部の先駆的成果があって初めて成し遂げられたものである。
[馬場錬成]