ウィルム(英語表記)Alfred Wilm

改訂新版 世界大百科事典 「ウィルム」の意味・わかりやすい解説

ウィルム
Alfred Wilm
生没年:1869-1937

時効硬化アルミニウム合金ジュラルミン発明者。ドイツ,シュレジエン地方の領主の子。ベルリンのシャルロッテンブルク工科大学でウェーレンに冶金学を学び,ゲッティンゲン大学助手,ゴルトシュミット社研究員などを経て,1901年新設の中央科学技術研究所冶金部の研究員となった。黄銅に代わる薬莢(やつきよう)材料としてアルミニウム合金の開発研究に従事。06年,銅Cu4%,マンガンMn,マグネシウムMg各0.5%,残りアルミニウムAlの合金を焼入後,常温に放置すると,時間とともに硬さ,引張強さが増大すること(時効硬化)を発見。航空機発達は,この合金(ジュラルミン)の発見によるところが大きい。彼は第1次大戦中,軍事研究を指導したが,終戦後直ちに故郷ザールベルクの山荘に退いた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウィルム」の意味・わかりやすい解説

ウィルム
うぃるむ
Alfred Wilm
(1869―1937)

ドイツの金属学者。ジュラルミンの発明者。1906年、理工学中央研究所でアルミニウム合金を研究していたとき、銅とマグネシウムのある量を添加したアルミニウム合金が時間とともに硬くなることを発見した。初め硬度計が狂ったためかと思ったが、そうではないことが確認された。これは金属学上の時効硬化という重要現象の発見であり、軽くて軟らかいアルミニウムから、硬いジュラルミンという新合金の製造を可能にした。ジュラルミンは同一重量当りの強さが鉄材の3倍もあり、航空機用材として絶大な威力を発揮した。

中沢護人

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百科事典マイペディア 「ウィルム」の意味・わかりやすい解説

ウィルム

ドイツの冶金学者。シュレジエン地方の領主の子として生まれ,ベルリンのシャルロッテンブルク工科大学で学ぶ。1901年以降ノイバーベルスベルク(ポツダム)の中央科学技術研究所でアルミニウム合金開発の研究に従事し,1906年ジュラルミンを発明。航空機の発達に大きな影響を与えた。

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世界大百科事典(旧版)内のウィルムの言及

【ジュラルミン】より

…ドイツのA.ウィルムが20世紀の初めに発明したアルミニウム合金で,約4%の銅,0.5%ずつのマグネシウムとマンガンを含む。鋼は高温に加熱し,水や油に焼き入れることにより硬化するので,ウィルムは同様のことをアルミニウム合金で企てたが,焼入れすると反対に軟らかくなったので,そのまま放置したところ2~3日で著しく硬化したことを発見し,おおいに驚いたといわれる。…

※「ウィルム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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