ウミタル(読み)うみたる

改訂新版 世界大百科事典 「ウミタル」の意味・わかりやすい解説

ウミタル (海樽)
doliolid

尾索綱サルパ目ウミタル科Doliolidaeに属する原索動物総称,またはそのうちの1種を指す。世界大洋の温水域に広く分布し,浮遊生活を行う。ウミタルDoliolum denticulatumは体長3~6mmの寒天質のビヤ樽状で,淡い紫色か紅色。体壁の内側に8個の環状筋がたが状に体の周囲をとりまいており,前端に口,後端に排出口がある。環状筋を収縮して水を噴出し,その反動で移動する。鰓裂(さいれつ)は100対に達することがある。胃は第5筋間にあり,腸がかぎ状に曲がって右側第6筋帯に肛門がある。雌雄同体で,受精卵は厚い寒天質に包まれたオタマジャクシ形幼虫に発育してしばらく浮遊生活したあと,しだいに尾部を失って無性個体になる。この個体の体内に多くの小葉体ができ,体の一部に付着したまま有性個体に発達する。有性世代無性世代とを交互に繰り返し,世代交代をする。大型回遊魚の重要な天然飼料になっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウミタル」の意味・わかりやすい解説

ウミタル
うみたる / 海樽

原索動物門尾索綱環筋目に属する海産浮遊動物の総称。体は一般にビヤ樽形で長さ10ミリメートル前後。箍(たが)のように体を取り巻く8本の環状筋の収縮により前後に移動する。前端にある入水孔(口)に続き体前半部を占める咽頭(いんとう)の後部壁には、長楕円(ちょうだえん)形の多数の鰓裂(さいれつ)が左右各1列、前後に帯状に並ぶ。体後半部を占める排出腔(はいしゅつこう)には肛門(こうもん)や生殖孔が開口し、体後端にある大きな出水孔で外界に開く。生活史は次のようにきわめて複雑である。雌雄同体の有性個体から生じた胚(はい)は有尾幼生を経て、9本の環状筋と背芽茎(はいがけい)と腹芽茎および4対の鰓裂を備える無性個体となる。この腹芽茎の先端から分節した無数の小芽体は体の右側を通って背芽茎に集積し成長する。これら小芽体の一部は芽茎を離れ、無性個体と酷似した構造をもつ育体となる。育体は離脱時にすでに背芽茎から移行し分節していた多数の有性個体小芽を育成し、随時これを遊離させる。温水域外洋を中心に全世界に広く分布する。

 既知の約20種のうち、日本近海には少なくとも3種がすむ。このうち沿岸水域にも普通にみられるトリトンウミタルDolioletta gegenbauri var. toritonis大群をなすことがある。

[西川輝昭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウミタル」の意味・わかりやすい解説

ウミタル
Doliolum denticulatum

原索動物門尾索亜門サルパ綱環筋目ウミタル科。海産プランクトンの一種で,無性世代と有性世代が交互に繰返される世代交代をする。有性個体は体長3~6mmの樽形で,雌雄同体。体壁の内側に8個の環状筋がある。鰓裂は約 100対。世界の大洋の温水域に広く分布する。

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百科事典マイペディア 「ウミタル」の意味・わかりやすい解説

ウミタル

尾索類ウミタル科の原索動物。体長3〜6mm,透明でビール樽(だる)状。体壁の内側にたが状に走る環状筋を収縮して水を吹き出し,その反動で運動する。世界の大洋の温水域に広く分布し,一生の間浮遊生活をする。

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