原索動物(読み)ゲンサクドウブツ(その他表記)Protochordata

デジタル大辞泉 「原索動物」の意味・読み・例文・類語

げんさく‐どうぶつ【原索動物】

動物界一門一時期あるいは終生脊索せきさくもち脊椎せきついはもたない動物脊椎動物近縁とされる。尾索類ホヤ頭索類ナメクジウオなどに分けられ、すべて海産。

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精選版 日本国語大辞典 「原索動物」の意味・読み・例文・類語

げんさく‐どうぶつ【原索動物】

  1. 〘 名詞 〙 動物分類上の門の一つ。原始的な背骨にあたる脊索(せきさく)が終生または幼時期のみに存在し、頭索類(ナメクジウオ類)と尾索類(ホヤ類サルパ類)が含まれる。擬索類ギボシムシ類)もかつては含まれたが真正の脊索をもたないことから半索動物として扱われている。脊椎動物と合わせて脊索動物と呼ぶこともある。

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改訂新版 世界大百科事典 「原索動物」の意味・わかりやすい解説

原索動物 (げんさくどうぶつ)
Protochordata

動物分類上の1門。脊索が生ずるところから脊椎動物門と合わせて脊索動物門とされることもあり,無脊椎動物の中でもっとも脊椎動物に近い動物群である。すべて海産。この動物群に共通している性質は,終生あるいは幼生期に消化管の背側に脊索が存在し,咽頭(いんとう)部の両側に鰓孔(えらあな)の列があり,神経がときに神経管をつくり,内柱をつくることなどである。このような性質は脊椎動物の発生中に現れたり,ある種の脊椎動物と共通している。単体あるいは群体をつくり,終生浮遊生活をするもの,他物に着生して生活するものなどがある。約2500種が知られている。

 原索動物は脊索の状態によって尾索類Urochordataと頭索類Cephalochordataの2綱に分けられる。尾索類にはホヤ目Ascidiacea,サルパ目(タリア目)Thaliacea,尾虫目(オタマボヤ目)Appendicularia,火体目(ヒカリボヤ目)Pyrosomataの4目が含まれる。各目に含まれるホヤサルパウミタルオタマボヤヒカリボヤなどはそれぞれ形態が非常に違っているが,ホヤ目とサルパ目,火体目には幼生の時期のみ,そして尾虫目は成体でも脊索が通っている尾をもっている。

 ホヤ類の幼生は,尾の部分に脊索が通っているオタマジャクシ形で浮遊生活をしているが,他物に付着して変態が始まると,脊索と尾の筋肉がだんだん頭の部分に吸収され,親の形になったときはまったく見られなくなる。体はセルロース類似の物質からなるじょうぶな外皮に包まれ,上端に入水孔,側方に出水孔が開いている。体内には大きな鰓囊(さいのう)という袋があり,その腹中線に沿って内柱がある。アカボヤマボヤは食用になり,養殖もされているが,大部分のものは諸施設に付着して害を与える。サルパ類の体は樽状や円柱状で,7~20本の環状筋が体の周囲を取り巻くものと,一部切断されているものとがある。体の前端に入水孔,後端に出水孔が開いていて,一生の間浮遊生活をする。魚類の天然飼料になる。尾虫類は親でもホヤ類の幼生によく似た形態で,脊索が通っている長い尾をもっている。体全体が包巣(ほうそう)という薄い被囊に包まれており,強い刺激を受けたり,古くなると脱ぎ捨てて新しくつくる。包巣は餌のプランクトンをとったり,定方向運動に不可欠なものである。火体類は多くの個虫が入水孔を外側に向けて並んで円筒形の群体をつくり,大きなものでは長さが20cmにもなる。浮遊生活をする。

 頭索綱は魚の形をしたナメクジウオで代表される。成体でも脊索が体の全長にわたってのび,その上を脊髄が走っている。しかし,頭がないので脳も目も発達しておらず,閉鎖血管系であるが心臓はない。体側に64筋節が並んでいる。この筋肉の働きで敏しょうな行動ができる。浅海の砂の中に潜り,体の先端だけを水中に出して生活するが,ときに水中を泳ぐこともある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原索動物」の意味・わかりやすい解説

原索動物
げんさくどうぶつ

脊索(せきさく)およびその背方に位置する中空の神経管、鰓裂(さいれつ)(咽頭(いんとう)側壁の裂け目)、それに咽頭腹正中を縦走する内柱を、生活史の少なくとも一時期にもつが、脊椎(せきつい)は終生もたない海産動物の総称。脊索を尾部にもつもの(尾索類Urochordata=被嚢(ひのう)類Tunicata)と、それが体全長にわたるもの(頭索類Cephalochordata)とに大別される。冒頭にあげた諸特徴のうち、内柱は脊椎動物の甲状腺(せん)の先駆とみなされ、また脊椎を除くほかの特徴は脊椎動物と共通する。このため、尾索、頭索、脊椎の3動物群を系統的に近縁とみなして、脊索動物門Chordataの3亜門にそれぞれ位置づける近年の傾向があるが、前二者を原索動物門Protochordataとして独立させる体系もなお用いられている。かつては、半索動物をも原索動物の一員とみなしたが、前者の口盲管と後者の脊索との相同性が否定され、現在では原索動物から除外している。なお、近年、微化石コノドントを体内にもった動物の化石が得られ、これを脊索動物とみなして錐歯索動物亜門(すいしさくどうぶつあもん)Conodontochordataをたてる説、あるいは従来棘皮(きょくひ)動物に位置づけられてきた海果類(化石)を、すべての脊索動物の祖先形とみなしてカルキコルダータ亜門Calcichordataをたてる説が提唱されているが、前者は異論が多く、後者もまだ大方の支持を得るに至っていない。

 脊索の構造には多様性が著しく、原索動物の系統進化に関する種々の議論をよんでいる。すなわち、頭索類では、脊索は筋肉性で脊髄神経の支配を受ける。一方、尾索類においては、ホヤ類幼生のあるものや尾虫類では、細胞外基質を扁平(へんぺい)単層上皮が包み込む構造であるが、マボヤやウミタル類の幼生では、一列に配列した細胞からなる。なお、脊椎動物では一般に多数の空胞細胞から構成される。

[西川輝昭]

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百科事典マイペディア 「原索動物」の意味・わかりやすい解説

原索動物【げんさくどうぶつ】

動物界の一門。少なくとも一生の間に脊索や鰓孔(さいこう)をもつこと,また神経がときに神経管をつくる傾向のあることなどを特徴とする。脊索の違いにより,頭索類(ナメクジウオ)と尾索類(ホヤサルパ)が区別される。すべて海生。脊椎動物と合わせて,脊索動物ということもある。
→関連項目脊椎動物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「原索動物」の意味・わかりやすい解説

原索動物
げんさくどうぶつ
Protochordata

原索動物門に属する動物の総称。体制,生活様式はさまざまであるが,終生あるいは一生のある時期に脊索をもつこと,囲鰓腔に囲まれた鰓嚢をもつことなどの共通した特徴をもち,脊椎動物に近い動物とされる。すべて海産。頭索類尾索類半索類の3綱に分けられ,1600余種が知られている。

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栄養・生化学辞典 「原索動物」の解説

原索動物

 通常脊索動物門の一群に含める動物の一群であるが,一群を別にする説もある.脊椎骨はなく,脊索,背部神経管,さい裂,囲さい腔,内腔をもつ動物の群.

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世界大百科事典(旧版)内の原索動物の言及

【動物】より

…しかし,これらを二つの門に分ける見解もあり,ここでは後者に従っておく。(a)はっきりした頭がなく,体は胴と舵状の尾からなり,軟骨または硬骨の脊柱や頭骨はないもの 〈原索動物門〉が含まれ,これに脊索が幼生の尾部にしかない被囊(ひのう)亜門と,脊索が成体にもあり,体の全長にわたっている頭索(とうさく)亜門がある。被囊亜門はオタマボヤ,ホヤ,サルパの類で,約2500種があり,海生。…

※「原索動物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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