日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウルル(北欧神話の神)」の意味・わかりやすい解説
ウルル(北欧神話の神)
うるる
Ullr
北欧神話の神。シフの子で、トールの継子(けいし)にあたる。ユーダリルに住み、並ぶ者のない名射手でありまたスキーヤーであるウルルは、美貌(びぼう)の戦士で、アイスランドの学者スノッリ・スツルソンは、決闘のおりにはこの神に祈願するとよいと記している。また『エッダ』や『スカルド詩』からは、戦士はウルルの腕輪にかけて勝利を誓ったことが断片的にうかがえる。また、雪や氷に覆われた山を盾に乗って滑り降りることから、盾のことを詩語で「ウルルの船」と言い換える。主神オーディンは、二つの火の間に置かれたとき、最初に自分を救い出してくれる者にウルルとすべての神々の加護を約束しており、またサクソの『デンマーク人事誌』では、悪事のために追放されたオーディンの代理にたてられたのはオレルスであるが、これはウルルと同一視されている。このほか、スウェーデンやノルウェーに残る多くの地名から、古くはウルルが北欧で盛んに崇拝された神であり、さらに乏しい伝承からは、冬の神であったらしいこともわかる。
[谷口幸男]