日本大百科全書(ニッポニカ) 「エイヤー」の意味・わかりやすい解説
エイヤー
えいやー
Sir Alfred Jules Ayer
(1910―1989)
イギリスの哲学者。ロンドン大学教授、オックスフォード大学教授を歴任した。1932年ウィーン大学留学中にウィーン学団と交わり、26歳のときに『言語・真理・論理』Language, Truth and Logic(1936)を著すことによって、論理実証主義をイギリス哲学界に紹介、導入した。その明晰(めいせき)で力強い文体と論法は、哲学の任務が科学によって取り残された諸問題の分析にあり、哲学は最終的には科学の論理学になるという考え方を端的に示している。バークリーやヒュームの経験論を基盤としてラッセルやウィットゲンシュタインの理説を擁護し、「検証の原理」principle of verificationの厳密なる公式化を実現することを目ざした。神学、美学、倫理学を含むあらゆる形而上(けいじじょう)学的命題は無意味であり、観察によって真偽を検証することができる経験的命題と論理学および数学の命題のみが有意味であると主張した。主著は『The Problem of Knowledge』(1956)、『The Concept of Person』(1963)。
[宮下治子 2015年7月21日]