20世紀の英米哲学を特徴づける分析手法。解決すべき哲学的問題を表現する命題、あるいは、その問題において重要な事例となる命題についてその意味を分析することによって、当該の問題を解決、あるいは解消するという手法である。ドイツの哲学者で数学者のフレーゲがその創始者とされている。意味の分析は大きく次の二つの方法によってなされる。
[土屋 俊]
問題となる命題と同じ機能を有する命題を別種の言語において表現する。この場合、別種の言語はもとの言語よりも詳細にその構造が知られている必要がある。この型の分析の代表は、B・ラッセルによる確定記述の分析である。彼は、日常言語における「現在のフランス王は禿(はげ)である」という文章を普通の主述構造として分析すると、共和制であるゆえに存在しないはずのフランス王が存在することになるという困難が生ずるという事態を解決するために、彼自身がその完成に力を尽くした記号論理学という別種の言語を利用して、「あるものは現在フランス王である」「そのあるものは禿である」「そういうものは唯一である」という三つの命題の連言としてこのもとの文を分析した。このことによって、この文章は端的に偽(にせ)となり、非存在者について語るという困難は解消した。この種の分析としてはほかに、G・ライル『心の概念』における、心的述語を含む命題を個人の傾向性を表す準法則命題へ還元する分析や、クワインによる存在の概念を変項の値という概念へ還元する分析などがあげられる。
[土屋 俊]
還元的分析は命題を他の命題で置き換えることを目的にするが、用法分析においては、命題あるいは単語がいかなる状況で使用されるかということを示すことによって、哲学的問題に答える。たとえば、J・L・オースティンは、「知識」とはなにかという問題に対処するために、まず「私は……を知っている」という発言がなされる状況を考察して、その発言をすることは、発言の相手に対して自分が責任をもってその真理性を確約、保証することであると分析した。このことによって、知識の問題は、人間の行為の問題の一種として考えることが可能になった。同種の分析としては、P・F・ストローソンによる「真理」の分析、H・L・A・ハートHerbert Lionel Adolphus Hart(1907―1992)による所有の分析、J・サールJohn Searle(1932― )による約束の分析、R・M・ヘアRichard Mervyn Hare(1919―2002)による倫理の分析が代表的なものである。現在では、このいずれの分析手法も、哲学的主張の内容を問わずに活用され、もはや英米哲学のみを特徴づけるものではなくなりつつある。
[土屋 俊]
『坂本百大編『現代哲学基本論文集Ⅰ・Ⅱ』(1985・勁草書房)』▽『B・ラッセル著、平野啓訳『数理哲学序説』(岩波文庫)』▽『R・M・ヘア著、小泉仰他訳『倫理の言語』(1983・勁草書房)』▽『大森荘蔵他編『科学時代の哲学』全3巻(1964・培風館)』▽『ホスパーズ著、斎藤晢郎他訳『分析哲学入門』全5巻(1971・法政大学出版局)』▽『W・v・O・クワイン著、中山浩一郎他訳『論理学的観点から』(1972・岩波書店)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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