翻訳|enterovirus
発疹が出る手足口病や、まひを伴うことがあるポリオの原因となるウイルス類の総称。D68という種類に感染すると、発熱や鼻水のほか、呼吸困難など呼吸器症状が現れる。症状が出るのは子どもが多いとされ、大人は無症状のこともある。国立感染症研究所によると、昨年は国内で250人以上からエンテロウイルスD68が検出された。昨年夏以降、子どもを中心に原因不明のまひが報告され、一部から同ウイルスを検出、厚生労働省が調査に乗り出した。米国でも2014年8月~15年1月に大流行し、千人以上の感染が確認された。
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RNA(リボ核酸)ウイルスでピコルナウイルス科に属す。ポリオウイルス(1~3型)、コクサッキーA群ウイルス(1~24型)、コクサッキーB群ウイルス(1~6型)、エコーウイルス(1~34型)、その他のエンテロウイルス(68~72型)などが含まれる。エンテロenteroとは腸を意味し、腸管親和性のウイルスが多く含まれる。
エンテロウイルスは1本鎖のRNAをもち、ウイルス粒子は正二十面体、直径20~30ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)、カプソメア(カプシドの構造単位)数32で、エンベロープ(外被)はない。ゲノムは感染細胞の細胞質のなかでmRNA(メッセンジャーRNA)として働く。
エンテロウイルスの分類は成熟度が低く、問題点を将来に残している。エコーウイルスといわれた数種が他の群に移行し、また、他の群からエコーウイルスへ移行されるなど変わりつつある現状である。新しく発見されたエンテロウイルスは通し番号をつけることになっており、A型肝炎ウイルスはポリオウイルス1型から数えて72番目のためエンテロウイルス72型とされている。特定の血清型ウイルスによっておこる疾患としては、手足口病(コクサッキーA群ウイルス16型)、流行性筋痛炎(コクサッキーB群ウイルス1~6型)、心筋炎(コクサッキーB群ウイルス1~5型)、急性出血性血膜炎(エンテロウイルス70型)がある。
[曽根田正己]
「腸管系ウイルス」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ウイルスの感染によって起こる下痢症。病原体がウイルスであることは以前から知られていたが,組織培養法の開発によって,おもにエンテロウイルスであることが判明,さらに乳幼児に多い下痢症がおもにロタウイルスによることが確認された。下痢症を起こす既知ウイルスにはこのほか,アデノウイルス,レオウイルス,ノオオークウイルス,コロナウイルス,小型ウイルス粒子などがある。…
※「エンテロウイルス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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