日本大百科全書(ニッポニカ) 「エコーウイルス」の意味・わかりやすい解説
エコーウイルス
えこーういるす
ECHO virus
ピコルナウイルス科に属するエンテロウイルスの1種。1本鎖RNA(リボ核酸)ウイルスで、直径24~30ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)、カプソメア(カプシドの構造単位)数32、エンベロープ(外被)はない。エコーウイルスには34の数字がついた血清型があるが、血清型8はエコーウイルス21型、血清型10と28はレオウイルス1型と1A型にそれぞれ変更、またエコーウイルス34型はコクサッキーA24型の抗原変異型となっている。ある型のものは、ヒトのO型血球を凝集する。アカゲザル、カニクイザル、ミドリザルの腎(じん)細胞が培養に用いられ、検体に接種して分離する。培養細胞の変性(細胞変性効果)が認められたら、血清学的に、細胞変性阻止効果によって鑑定し、さらに、ペア血清中の抗体価の変動や有無を補体結合反応で確認する。
エコーウイルスはenteric cytopathogenic human orphan virusの頭文字をとった略称で、無症候のヒトの糞便(ふんべん)から分離され、腸管の細胞変性をおこしながら、病原不明であるところから名づけられたものであるが、現在ではヒトに感染して、無菌性髄膜炎、発疹(はっしん)性熱性疾患、夏かぜ、下痢などをおこすことがわかっている。
[曽根田正己]