ピコルナウイルス科のエンテロウイルスに属するウイルス。1本鎖のRNA(リボ核酸)を有し、直径27~28ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)。カプソメア(カプシドの構造単位)数32、正二十面体をなし、エンベロープ(外被)はない。エーテルには耐性。血清学的にはA、Bの2群に大別され、Aは24型、Bは6型に分類される。本ウイルスはエタノール(エチルアルコール)、クレゾールなどの消毒剤に安定し、ホルマリン、溶液濃度0.1Nの塩化水素ではただちに不活性化する。マウスに病原性が強く、チンパンジーとミドリザルでは無症状感染をする。サルの腎(じん)細胞、ヒトの羊水細胞、胎児繊維芽細胞などでよく増殖する。アメリカ合衆国・ニューヨーク州のコクサッキー町で分離されたのでこの名がある。本ウイルスには種々の疾患をおこすウイルスが含まれる。感染初期には咽頭(いんとう)にウイルスが存在し、ついでウイルス血症が生じ、それぞれの症状が現れてくる。本ウイルスは糞便(ふんべん)中に数週間排出する。コクサッキーBウイルスは、致命率の高い乳幼児脳心筋炎をおこすことで知られる。このほか、コクサッキーウイルスによる臨床症状としては、ヘルパンギーナ(水疱(すいほう)性口峡炎)、夏季熱、胸痛症、無菌性髄膜炎、新生児感染症、かぜ症候群、手足口病、心筋炎、糖尿病などがある。
[曽根田正己]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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