デジタル大辞泉 「A型肝炎ウイルス」の意味・読み・例文・類語 エーがたかんえん‐ウイルス【A型肝炎ウイルス】 A型肝炎の原因となる肝炎ウイルス。RNA(リボ核酸)をゲノムとするRNAウイルス。患者の糞便中に排出され、食べ物や水を介して感染し、2~6週間の潜伏期を経て発症する。セ氏85度以上・1分間以上の加熱で死滅する。HAV(hepatitis A virus)。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例 Sponserd by
内科学 第10版 「A型肝炎ウイルス」の解説 A型肝炎ウイルス(肝炎ウイルス) (1)A型肝炎ウイルス(hepatitis A virus:HAV) 1)形態と構造: HAVは経口感染性であるためにエンテロウイルス属に入れられている.HAVは直径27 nm,正二十面体のエンベロープをもたない粒子で,カプシド蛋白とゲノムRNAなどで構成され,糖質や脂質はない.HAV RNAは約7.5 kbpの線状1本鎖で,宿主の蛋白合成システムを使用,ポリ蛋白が合成される.HAV RNAは,ピコルナウイルス科に所属するウイルスRNAと同様の構造をもち,5'末端に穀蛋白が,3'末端にRNAポリメラーゼがコードされている(Hollignerら,1990). 2)ウイルスの複製: 細胞内に侵入したHAVは,裸のプラス鎖RNAとなり,RNAコード領域(open reading frame)から翻訳されたポリ蛋白は,宿主のプロセス酵素により切断され,1個の構造蛋白と2個の非構造蛋白がつくられ,各蛋白はさらに切断されて機能蛋白ができる. 3)細胞培養と抗原性: HAVは培養細胞に感染,増殖する肝炎ウイルスであり,組織培養で得られたウイルスを不活化したワクチンが市販されている. HAVの血清型は1種類であり,HAV粒子は共通の抗原性をもつ.HAV粒子を加熱により失活させると,抗原活性も消失する. 4)病原性(感染様式): ヒトと感受性動物では,HAV感染により急性肝炎が発症する.経口感染により,2~6週間(平均28日)の潜伏期の後,急性肝炎を発症しうる.潜伏期の後期に大量のウイルスが排泄されるが,血清トランスアミナーゼ値の上昇期に低下,ピーク時までに停止する.肝炎発症期は抗体(IgM型HA抗体)の出現時期でもある.潜伏期からHAV排泄の極期に至るあいだ肝細胞傷害はみられず,HAVに直接の肝細胞傷害性はないと考えられている.回復後に出現するIgG抗体は高い感染防御能をもつ中和抗体であり,A型肝炎に再感染することはない.[溝上雅史] ■文献 Hollinger FB, Ticehurst J: Hepatitis A virus. In: Virology, 2nd ed(Fields DM ed),pp631-670, Raven Press, New York, 1990. 加藤宣之,土方誠也:ウイルス複製と遺伝子発現,C型肝炎ウイルス.蛋白質核酸酵素,37(10月増刊号):2626-2632, 1992. 岡本宏明,真弓 忠:肝炎ウイルスと肝炎の発症機序,B型.最新内科学大系 48,ウイルス肝炎—肝感染症(井村裕夫,尾形悦郎,他編),pp12-39,中山書店,東京,1991. 出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報 Sponserd by
世界大百科事典(旧版)内のA型肝炎ウイルスの言及 【肝炎】より …[A型肝炎hepatitis A] (1)ウイルスと感染経路 ウイルスは直径27nmの球形粒子でRNAウイルスである。感染は,A型肝炎患者の糞便中に排出されたA型肝炎ウイルスhepatitis A virus(略称HAV)の経口感染による。流行地では井戸水が感染源になる例が多い。… 【肝機能検査】より …【大久保 昭行】。。… ※「A型肝炎ウイルス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。 出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」 Sponserd by