日本大百科全書(ニッポニカ) 「オムニチャネル」の意味・わかりやすい解説
オムニチャネル
おむにちゃねる
omnichannel
小売業における顧客との接点のあり方の一つ。オムニomniは「あらゆる」「さまざまな」などを意味する接頭語で、チャネルchannelは「販売経路」をさすマーケティング用語である。コンビニエンス・ストアやスーパーマーケット、百貨店、専門店などの実店舗と、従来からある新聞やちらし、電話などを使った通信販売、さらにパソコンやスマートフォン、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを通じたネット販売など、急速に拡大したあらゆる販売経路を融合し、顧客に利便性の高い消費環境を提供し、収益に結びつける手法をいう。電子商取引(eコマース)が盛んになるまでは、実店舗(リアル)とeコマース(ネット)を対比し、複数の販売経路という意味でマルチチャネルという名称が用いられていた。しかし、インターネットやモバイル端末の普及によりあらゆる場所で商品情報を入手し、購入できるようになったため、集客力や販売力を最大化するオムニチャネルの構築が重要視されている。
たとえば、国内に約1万7000の実店舗を有するセブン&アイ・ホールディングスでは、実店舗とネットによる販売を組み合わせ、実店舗で取り扱うことは不可能な商品30万アイテムを、実店舗にある端末やカタログ、ネットから注文することにより、24時間以内に指定した実店舗で受け取れるサービスの構築を目ざしている。
総務省の『平成25年版情報通信白書』でも、販売経路の多様化によりO2O(オーツーオー)という呼称の意味が変化してきたことを取り上げている。当初、O2OはOnline to Offline(ネットから実店舗への誘い込み)を意味することが多かったが、顧客がいつでもインターネットとつながるようになったことで、Offline to Online(リアルからネットへの誘引)の仕組みも融合され、両者の境目がなくなってきたと指摘している。
[編集部]