オランス(英語表記)orans

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オランス」の意味・わかりやすい解説

オランス
orans

ラテン語「祈る人」の意。初期キリスト教美術,特に3世紀のカタコンベ壁画石棺などによく表わされる図像で,両手を左右に上げて立つ人物表現をさす。祈りを捧げる姿を表わすものと解されるが,原初の意味は時代とともに変化していった。古くは死者のために死後救済を祈る代願者,のちには天国における至福霊魂を象徴するものとなった。また,女性像の場合は,しばしば,地上の教会 (エクレジア) の寓意像とも解される。ビザンチン美術では,聖母マリアがこの姿をとって表わされ,「キリスト昇天」の場面に組込まれることが多い (マリア・オランス) 。作例はローマのプリシラのカタコンベ壁画,いわゆる『ベールの婦人』 Donna velata (3世紀中葉) ,ラベンナのサンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂 (6世紀後半) 。

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百科事典マイペディア 「オランス」の意味・わかりやすい解説

オランス

〈祈る人〉を意味するラテン語。初期キリスト教美術に見られる,両腕をひろげて立ち,掌(たなごころ)を上に向けた像。本来は死者の救済を祈願するものであったが,後に天国で至福のうちにある霊魂を意味するようになった。両腕を上げたマリア像のこともいう。

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