日本大百科全書(ニッポニカ) 「オールド・ビック」の意味・わかりやすい解説
オールド・ビック
おーるどびっく
Old Vic
イギリスの劇場および劇団名。ロンドンのテムズ川南部に1818年ロイヤル・コバーグ劇場の名で開設されたが、ビクトリア王女の来場を記念してロイヤル・ビクトリア劇場と改称、それがのちにオールド・ビックの名で親しまれるようになった。長い間場末の寄席(よせ)であったが、80年に社会改良家エマ・コンズが禁酒ミュージック・ホールに改造、その死(1912)後、姪(めい)のリリアン・ベイリスの9年間かけてのシェークスピア劇全作品上演の壮挙により、一躍シェークスピア劇のメッカとなった。ジョン・ギールグッド、ローレンス・オリビエ、イーディス・エバンズらがこの舞台で当りをとるなど、俳優の登竜門ともなった。劇団はシーズンごとの契約制で新鮮な刺激を図っていたが、1941年に爆撃で劇場が倒壊したあと、ウェスト・エンドのニュー劇場で公演を続け、50年に本拠地に戻った。古典や新作の上演で着実な活躍ぶりを示したが、63年からナショナル・シアター劇団の本拠地となり、オールド・ビックの劇団活動は停止した。76年のナショナル・シアター開場後、一時名称が復活したが、81年に消滅した。
[中野里皓史]