翻訳|bombing
航空機から爆弾等を投下して地(海)上目標を攻撃すること。1911年秋イタリア軍がトルコとの戦争(伊土戦争)中に,当時はトルコ領であった北アフリカのトリポリ戦場で行ったのが最初といわれる。日本では第1次世界大戦中の1914年9月青島(チンタオ)攻略に参加した陸・海軍の航空部隊がドイツ軍要塞あるいは軍艦に対して爆撃を行った。当時はまだ特殊な投下装置や照準具がなかったため,野砲弾に翼をつけた爆弾を手動によって投下する方式をとっていた。それでも地上や海上の目標は上空から確認できるため,爆撃の効果はあり,地上目標に被害を与えている。大戦2年目の15年になると多くの偵察機に爆弾投下器と照準装置が装備された。しかし爆弾搭載量の少ない偵察機では威力に限度があった。16年には爆弾搭載量200kg内外の爆撃機が出現し,戦争の様相は立体的になった。爆撃機の最大の敵は戦闘機であった。戦闘機の活躍によって空中優勢を得た側は,偵察機や爆撃機を自由に活躍させ,地上作戦を有利に展開することができた。爆撃機は敵の第一線はもちろん,指揮中枢,集中部隊,後方補給路も直接攻撃できた。このような目標の攻撃を戦術爆撃という。17年になると,航続距離800km,搭載量1tにも及ぶ大型の爆撃機が出現した。この爆撃機は第一線はるか後方の敵補給拠点,軍需工業施設あるいは敵の戦意を破砕するため主要都市を攻撃することができた。このような目標の攻撃を戦(政)略爆撃という。第1次世界大戦末期にはロンドン,パリ,ベルリン等の大都市が戦略爆撃をうけ,大きな被害を出した。
当時の飛行機の構造強度とも関連して,爆撃法は飛行機の速度高度を一定に保つ間に爆弾を投下する水平爆撃であった。緊要な小目標を攻撃する場合は,緊密な編隊で短い投下間隔で爆撃し,濃密な火網で目標を覆うようにする。たとえば,軍艦を水平爆撃で攻撃する場合,この方法を用いる。ある地域を制圧する場合は,やや間隔を開いた大編隊で,爆弾の威力圏が接する程度の間隔で投下し,地域全般に爆弾の雨を降り注ぐ。これを〈じゅうたん爆撃〉と俗称する。都市を攻撃するような場合,爆撃隊の被害を少なくするため,夜間攻撃が多く,また軍事目標と他を区分することが困難なので,無差別のじゅうたん爆撃となることが多い。
1935年前後から急降下爆撃が脚光を浴びるようになった。30度以上の降下角度をもって突進しながら行う爆撃を一般に急降下爆撃といい,とくに,60度以上の急角度で行うものを垂直爆撃と呼んでいた。水平爆撃では爆撃手が操縦者を誘導しながら照準・投下するが,急降下爆撃では操縦者が自分で行う。低空で目標に突進しながら爆弾を投下するので命中精度がよい。第2次世界大戦の初め,ドイツ軍の急降下爆撃隊は機甲部隊と協力して大きな戦果をあげた。日本海軍の艦上爆撃機隊も多くの撃沈戦果をあげた。第2次世界大戦後,戦略爆撃は大型爆撃機が,戦術爆撃は戦闘爆撃機が行うようになった。また,爆弾は一発必中の精密誘導爆弾に変わり,無差別爆撃は極力回避する方向に進んでいる。しかし,原子爆弾による爆撃はきわめて悲惨な無差別爆撃となる可能性がある。
→空襲
執筆者:生田 惇
国際法上は,戦争における害敵手段の一種で,一定の破壊力をもつ投射物を特定の対象に向けて発射するという方法を指す。より狭義には,陸戦における大砲や海戦における軍艦からの攻撃つまり砲撃に対して,空戦における航空機からの爆弾投下,つまり空襲を指す。科学技術や兵器の発達の結果,今日,爆撃とくに空襲は,破壊範囲を増大させ,多大の人的・物的被害を与えうる手段となっている。もっとも,戦争において交戦国は,敵国領域のあらゆるところに無差別的に爆撃しうるのではなく,国際法上一定の規制に従わなければならない。それによると,無防守地域における爆撃は一般に禁止され,この場合軍事目標に対する爆撃のみ許容される(〈軍事目標主義〉〈無防備都市〉の項を参照)。
執筆者:藤田 久一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般に航空機から爆弾を投下して、目標を攻撃することをいうが、ロケット弾や誘導ミサイルを使っての攻撃を含む場合もある。目標が敵の戦闘員、陣地、軍事施設、戦闘器材、軍用艦船などで、戦闘の推移に直接関連する場合を戦術爆撃といい、敵本土内の政治・経済中枢、産業施設、通信・運輸機構などを目標にして、戦争遂行の能力と意志を喪失させる場合を戦略爆撃という。
爆撃には、目標の種類と条件に応じて水平、降下、オフセット、トスなど、各種の手段がある。水平爆撃は、水平直線飛行中に目標を照準し、爆弾を投下するもので、高々度からの爆撃は主として大型機が地域爆撃(エリア・ボミング)を行うときに使う。低空(超低空)爆撃は、主として戦術攻撃機が、レーダーや対空火器、ミサイルなどを回避し、防空網を突破しての攻撃に使われる。また水上の艦船に対して、超低空を水平高速で飛行しながら爆弾を投下すると、水面に反跳して目標に命中する。この方式を跳飛爆撃(スキップ・ボミング)という。
降下爆撃は、目標に対向して降下しながら行う爆撃で、角度により緩降下、急降下に区分される。命中精度が高く、戦車、車両、艦船などの移動目標や、堅固な小目標の攻撃に適する。貫徹力を増すためには、ロケット弾を使用する。また対空砲火を受けやすいので、接近経路を違えて急に方向転換をする方法もとり、これをオフセット爆撃とよぶ。低空で侵入して目標直前で急上昇し、上昇中に爆弾を放す方法をトス(ロフト)爆撃という。爆弾はいったん上昇したのち目標またはその上空で爆発し、投下機は上昇運動に続いて反転し急速に離脱する。この方法によると、爆発までの時間があって、安全圏まで離脱が可能なので、低空での核攻撃などに適している。また、離脱時間をかせぐため、爆弾のフィンを展張したり、パラシュートを使用して落下抵抗を増やし、落下速度を下げるものもある。
正確な爆撃を行うためには、正確な航法が必要で、このため爆撃機や攻撃機には高精度の慣性基準装置を備えるのが一般化している。航法装置と爆撃コンピュータを連動させることによって、命中位置連続計算(CCIP)や投下位置連続計算(CCRP)が可能となって、より正確な爆撃が行える。また誘導爆弾を使用する場合には、それに応じた誘導装置と関連機材が必要となる。テレビ誘導ではテレビ画像受信機、レーザー誘導ではレーザー照射装置と画像装置、赤外線誘導では赤外線画像装置を装備し、操縦席で目標の特定をする。
[青木謙知]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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