オリビエ(読み)おりびえ(英語表記)Sir Laurence Olivier

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オリビエ」の意味・わかりやすい解説

オリビエ(Sir Laurence Olivier)
おりびえ
Sir Laurence Olivier
(1907―1989)

イギリスの俳優、演出家。5月22日ドーキングに生まれる。15歳のとき『じゃじゃ馬馴(な)らし』のキャサリン役で初舞台を踏み、職業俳優への道を歩む。1935年、『ロメオとジュリエット』のロメオとマキューシオをジョン・ギールグッドと交代で演じて好評を博し、それを機にオールド・ビックに加入(1937~1949)。印象的な瞳(ひとみ)と多彩な音声で情念を表現することに秀で、『ハムレット』『マクベス』などでシェークスピア役者としての名声を確立。1955年のピーター・ブルック演出『タイタス・アンドロニカス』の復活上演などで注目された。映画にも早くから出演、ハリウッドで『嵐(あらし)が丘』(1939)に主演後は、英米の映画界のスターとして幅広く活躍。『ヘンリイ五世』(1945)、『ハムレット』(1948)、『リチャード三世』(1955)では監督も兼ねて、シェークスピア劇の映画化に優れた成果を収めた。また、現代劇の演技、演出にも優れた才能をみせ、劇場経営にも手腕を発揮し、被爆したオールド・ビックの再開に尽力したほか、ナショナル・シアターの総監督(1963~1973)を務めた。私生活ではジル・エズモンド、ビビアン・リーと、それぞれ結婚・離婚ののち、1961年にジョーン・プロウライトと結婚。1947年にサーの称号を、1970年には俳優としては初めてロード一代貴族)の栄誉を授かった。

[中野里皓史]

資料 監督作品一覧

ヘンリイ五世 Henry Ⅴ(1945)
ハムレット Hamlet(1948)
リチャード三世 Richard Ⅲ(1955)
王子と踊子 The Prince and the Showgirl(1957)
三人姉妹 Three Sisters(1970)


オリビエ(Emile Ollivier)
おりびえ
Emile Ollivier
(1825―1913)

フランスの政治家。二月革命が起こると、共和派政治家の父親内務大臣のルドリュ・ロランと親交があったことから、人民総務長官に任命され、ついで知事となり、弁護士から若くして政界に入った。第二帝政のもとで立法府議員に選出され、当初反政府派であったが、1860年代に入って皇帝が自由主義的になると、協力的になった。1870年1月、皇帝の要請によって内閣を組織するとともに、法務大臣についた。プロイセンとの戦争(プロイセン・フランス戦争、1870~1871)が始まって1か月もたたない1870年8月、軍事的敗北と右翼勢力の台頭のなかで、オリビエ内閣は倒れた。そして9月の初め、セダンの戦いの敗北によって第二帝政は崩壊した。オリビエはその後政界を離れ、アカデミー会員として著作活動を続けた。著書は第二帝政に関するもので『一月二日内閣』『自由帝制』などがある。

[本池 立]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オリビエ」の意味・わかりやすい解説

オリビエ
Olivier, Laurence (Kerr), Baron Olivier of Brighton

[生]1907.5.22. サリー,ドーキング
[没]1989.7.11. ウェストサセックス
イギリスの俳優。 1926~28年バーミンガム・レパートリー劇場に所属。 35年ニュー・シアターで J.ギールグッドと交互出演した『ロミオとジュリエット』のロミオとマーキューシオの2役で注目された。 37年オールド・ビック劇場に加わり,『ハムレット』 (1937) をはじめ,『マクベス』や『オセロ』のイアーゴーなどで,シェークスピア俳優としての名声を確立。 44~49年オールド・ビック劇場の共同監督。 55年シェークスピア記念劇場 (現ロイヤル・シェークスピア劇場) で『タイタス・アンドロニカス』の注目すべき復活上演を行なったほか,『ペール・ギュント』 (45) ,『オイディプス王』 (45) ,シェリダンの『悪口学校』 (48) ,C.フライの『観測されたビーナス』 (50) などですぐれた演技を見せた。 62~65年チチェスター演劇祭の監督をつとめ,また 62年ナショナル・シアターの設立に伴い監督に就任し,第1回公演の『ハムレット』 (63) を演出,また 64年初めてオセロを演じて大きな反響を呼んだ。多くの映画にも出演しているが,彼が制作・主演した『ハムレット』 (1948年アカデミー作品賞・主演男優賞受賞) をはじめ,『ヘンリー5世』『リチャード3世』『オセロ』のシェークスピア作品は特に有名。2番目の妻は V.リー。 47年ナイトの称号を受け,70年俳優として初めて一代貴族 life peerを許されてブライトン男爵となり,81年名誉勲爵士に叙せられた。

オリビエ
Ollivier(Olivier), Émile

[生]1825.7.2. マルセイユ
[没]1913.8.20. オートサボア,サンジェルベレバン
第二帝政末期のフランスの政治家。 1857年共和派議員となり,ナポレオン3世に接近。「第三党」の指導者から 70年1月首相に就任,ただちに「1870年憲法」を提案し,国民投票によって承認された。この憲法は帝政のもとで議会制を確立しようとするものであった (→議会帝政 ) 。次いで同年7月プロシアに宣戦布告し,普仏戦争が勃発,フランス軍は各地で撃退され,同年8月首相を辞任した。救援におもむいたナポレオン3世も同年9月スダンで包囲されたうえ捕虜となり,第二帝政は崩壊した。主著『自由帝国』L'Empire libéral (1895~1912) 。

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