改訂新版 世界大百科事典 「カウンティ」の意味・わかりやすい解説
カウンティ
county
イギリスおよびイギリスの旧植民地の多くに見られる地理上および地方行政の単位。1066年のノルマン人によるイングランド征服以前から存在していた最大の地方行政単位であるシャイア(シャー)shireが,征服後ノルマンディ風にカウンティと呼ばれるようになったことから,この名称が用いられ出す。しかしイングランドでは,機構等に変化は見られはするが,その主たる役人であるシェリフを含め,アングロ・サクソン時代以来,地域・自治的共同体としての一体性等に一貫性を持ち続けていた。イングランドとウェールズは地理上のカウンティとしては52に区分され,行政上の単位としては〈行政上のカウンティadministrative county〉が58,それと同格の〈カウンティ都市county borough〉が83あった。しかし1973-75年以来,イギリス全体でこのカウンティ制にかなり大幅の改革が行われ,従来のカウンティ,カウンティ都市が統廃合され,新たにイングランドとウェールズでは,大ロンドンGreater London,6大都市圏カウンティmetropolitan county,47非大都市圏カウンティnon-metropolitan countyが生まれ,スコットランドは9地方regionと3島区island areaに,北アイルランドは26地区districtに区分された。ただしイングランドについて言えば,一般的には地理上のカウンティがその基礎に置かれており,したがって旧来のカウンティは事実上生き続けていると言えよう。新カウンティにはカウンティ議会county councilがあり,また,カウンティは地区districtに細分され,それぞれの地区にも議会がある。
カウンティ制度は,それぞれ若干の変化はあるが,アメリカ合衆国,カナダ,ニュージーランド,オーストラリア等を含め,イギリス人が植民したほとんどの国で採用されている。アメリカ合衆国では,カウンティはその植民地時代からほとんどの州の最大の地理上および行政上の単位として用いられている。
執筆者:小山 貞夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報