翻訳|sheriff
アングロ・サクソン時代に起源をもつ英米の地方役人。起源的には地方行政区分で後にカウンティになるシャイア(シャー)shireにおける国王の代官で,しかもシャイアの長である伯の代理人という二面性をもっていたが,1066年のノルマン人の征服以後は国王の代官としてカウンティの司法,行政,財政,軍事等広大な権限を一手に引き受けていた最高の地方役人であった。その後中央の国王裁判所の興隆,新設の地方役人であるコロナー,治安判事,統監等により漸次権限を奪われてきて,16世紀以後は主として名目的儀式上の任務を負うにすぎなくなっている。しかし現在も毎年国王により任命され,形式的には庶民院議員の選挙,陪審員の招集,裁判所の令状の執行,判決執行等カウンティ内の重要な公務を担っている。もっとも,実際にはシェリフの下僚で事実上恒久的に勤務しているシェリフ補佐がその通常の職務を果たしていて,シェリフは名誉職化している。
シェリフ制はスコットランドにも12世紀に導入され,またアメリカにも植民とともに継受されている。とくに日本でも西部劇で見かけることの多いアメリカのシェリフは,現在では州の下位区分であるカウンティ単位で通常は公選される行政の責任者かつ裁判所の役人であり,各種令状の執行,判決執行等のほか,治安維持等にも責任を有している。
執筆者:小山 貞夫
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…一般に,封建王制が確立する中世盛期以後,これらの爵位は国王が授与し,称号に表現される栄誉の配分を通じて政治秩序の組織化に役だてられたが,それ以前には,軍事的・政治的な実力にもとづいて各地の豪族がみずからそれ相応の称号をおびることが多かった。イギリスの伯(アール)は,アングロ・サクソン時代に地方の行政・司法・軍事等の権力を王からゆだねられた貴族のエアルドルマンealdormanに由来し,11世紀にこれがアールと呼ばれるようになるが,ノルマン・コンクエスト後,シェリフ(アングロ・サクソン時代のスキルゲレファscirgerefa)に州長官としての実権を奪われるにつれて,単なる称号と化した。デュークとマーキスは,大陸の制度に倣ったもので,アングロ・サクソン時代にはさかのぼらない。…
※「シェリフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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