カッコウムシ

改訂新版 世界大百科事典 「カッコウムシ」の意味・わかりやすい解説

カッコウムシ

甲虫目カッコウムシ科Cleridaeに属する昆虫総称。世界から約3000種,日本からは約50種が知られるが,熱帯地方に多い。小型の種が多いが,はでな色彩をもつものが少なくなく,英名gay-coloured beetleまたはcheckered beetleである。成虫幼虫とも肉食性でシロオビカッコウムシ,アリモドキカッコウムシThanasimus lewisi,ムネアカアリモドキカッコウムシT.substriatusなど,キクイムシ天敵として有益なものが多い。アリモドキカッコウムシ類の成虫は枯れた針葉樹の幹上に見られるが,強くくびれた胸部黒地に赤と白の横縞模様は,一見アカヤマアリのように見える。体長8mm内外。この科の幼虫には皮膚が紅赤色のものが多く,各胸節と腹部の末端節に褐色の紋があり,末端節には通常1対の突起をもつ。また各腹節の背面は瘤状に隆起するが,体の伸縮に伴って,この隆起が狭いキクイムシの孔道での移動を助ける。アカクビホシカムシNecrobia ruficollisは世界に広く分布し,骨や干魚などに集まる。同属のアカアシホシカムシN.rufipesは食糧倉庫,飼料倉庫にしばしば発生する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カッコウムシ」の意味・わかりやすい解説

カッコウムシ
かっこうむし / 郭公虫
checkered beetles

昆虫綱甲虫目カッコウムシ科Cleridaeに属する昆虫の総称。世界各地に分布し、熱帯域に多く、3000種以上知られており、日本でもおよそ50種が知られている。体長3~24ミリメートル、一般に細長い種がほとんどであるが、まれに卵形の種もある。青、緑など金属色のものや、黄、赤、白などの紋や帯をもつものなど色彩の目だつ種が多い。目は普通かなり大きく、触角は短く、脚(あし)の跗節(ふせつ)には葉片がある。多くの種は捕食性でほかの幼虫などを食べ、枯れ木、倒木やその虫孔(むしあな)などにみいだされる。アリモドキカッコウムシ属Thanasimusの種は森林害虫のキクイムシを捕食する益虫であり、シロオビカッコウムシTarsostenus univittatusラワン材の大害虫ヒラタキクイムシの孔から発見される。一部の種は花粉やバッタ類の卵を食べることが知られ、キノコに集まるものもある。アカアシホシカムシNecrobia rufipesは有名なコプラの害虫で、同属の他種とともに貯蔵動植物質を食べる。

[中根猛彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カッコウムシ」の意味・わかりやすい解説

カッコウムシ
Cleridae; checkered beetle; clerid beetle

鞘翅目カッコウムシ科の昆虫の総称。小~中型の細長い甲虫で一般に体は軟らかく,体表は滑沢かまたは毛や鱗毛におおわれる。明暗の斑紋があるものが多く,なかには金属光沢のある青色のものもある。頭部は大きく,前胸と同幅のものも少くない。複眼は顕著に突出する。触角は糸状,鋸歯状,棍棒状など多様である。肢はかなり強固でやや長く,跗節は5節。後翅の退化したものもある。ほとんど虫食性で,多くは材食性甲虫類 (キクイムシなど) の孔道に入り,その幼虫を捕食するが,ホシカムシ属 Necrobiaのように乾燥動物質を食害するものもある。世界のおもに熱帯に約 3000種が知られ,日本にはアリモドキカッコウムシ Thanasimus lewisi,シロオビカッコウムシ Tarsostenus univittatusなど約 30種を産する。

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