キャバレー・ボルテール(読み)きゃばれーぼるてーる(その他表記)Cabaret Voltaire

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キャバレー・ボルテール」の意味・わかりやすい解説

キャバレー・ボルテール
きゃばれーぼるてーる
Cabaret Voltaire

インダストリアル・ミュージック源流となったイギリスのグループ。チューリヒ・ダダイズムの発祥地からグループ名を拝借し、1974年、イギリスの工業都市シェフィールドで結成された。メンバーであるリチャード・H・カークRichard H. Kirk(1956―2021、ギター、シンセサイザー)、ステファン・マリンダーStephen Mallinder(1955― 、ベース、ボーカル)、クリス・ワトソンChris Watson(1952― 、エレクトロニクス)の3人は、リズム・マシンによる無機質なビートを土台に、ダダイズムの技法であるアッサンブラージュ(寄せ集め)やコラージュ(組合せ)を音響操作に応用した。ファースト・アルバム『ミックス・アップ』Mix-Up(1979)やセカンド・アルバム『ザ・ボイス・オブ・アメリカ』The Voice of America(1980)で聞くことのできる彼らの初期のサウンドは、実験的なスタイルによりさまざまなノイズやテープ・コラージュがメタリックに結合された音楽で、スロッビング・グリッスルと並んで後にインダストリアル・ミュージックとよばれるようになる。

 1981年にワトソンが脱退し、よりポップなダンス・ミュージックへと路線が変化していく。1980年代の彼らのミニマルテクノ・サウンドは、後のヨーロッパクラブ・ミュージックにも大きな影響を与えた。1992年に独自のレーベル「Plastex」を設立。メンバーのソロ活動も盛んで、カークはスウィート・エクソシストSweet Exorcistの別名でも活動していた。

増田 聡]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のキャバレー・ボルテールの言及

【ダダ】より

… 第1次大戦中,中立国スイスのチューリヒは亡命者のたまり場であった。1916年2月,逃亡兵の演出家バルと恋人の歌手エミー・ヘニングスは同地で,アルザス生れの画家アルプ,ルーマニアの詩人ツァラや画家ヤンコMarcel Janco(1895‐ )とともに〈キャバレー・ボルテールCabaret Voltaire〉を開催した。ベルリンの医者・詩人ヒュルゼンベックも加わり,小舞台と15~16卓だけのこの店で毎夜宣言,歌,騒音音楽,音声詩,同時詩,仮面舞踏などが演じられた。…

※「キャバレー・ボルテール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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