スウィート(読み)すうぃーと(英語表記)Henry Sweet

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スウィート」の意味・わかりやすい解説

スウィート
すうぃーと
Henry Sweet
(1845―1912)

イギリス英語学者言語学者、音声学者。ドイツハイデルベルク大学に学び、英語の歴史的研究の方法を知ったが、これに飽き足らず、真にイギリス的な英語学を独力で構築した。活動は多方面にわたるが、性格が災いしてか、あまりに時代に先んじていたためか、地位に恵まれず、オックスフォード大学音声学準教授にとどまった。英語史ことに古期英語の研究、科学的な英文典の発表、英語のみならず諸国語の音声学的研究、優れた教科書および辞書の編集執筆、どれをとっても当時の国際的水準を抜き、今日なお十分に参照するに足る業績を残し、いまに至るまでイギリス最高の学者の名に恥じない。その学風は、イギリスではワイルドHenry Cecil Wyld(1870―1945)、デンマークではO・イェスペルセンに継承された。

三宅 鴻 2018年7月20日]

『H・スウィート著、東浦義雄訳『古代英語文法入門』(1978・千城)』『ヘンリー・スウィート著、小川芳男訳『言語の実際的研究』(1986・英潮社新社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スウィート」の意味・わかりやすい解説

スウィート
Sweet, Henry

[生]1845.9.15. ロンドン
[没]1912.4.30. オックスフォード
イギリスの言語学者。音声学と英語学の研究に従事し,科学的英語学の基礎を築いた。音声学の分野では大陸の諸学者とともに一般音声学の確立に努力した功績が大きく,言語音声の表記のために A.ベルのビジブルスピーチを改良した「器官的記号」 organic notationを考案する一方,ローマ字を基礎とする2種の記号 broad Romic (簡略ローマ字式) と narrow Romic (精密ローマ字式) とを考案した。それらは現在の国際音声字母の基礎となる一方,前者 broad Romicは現在の音韻表記のさきがけとなった。英語学の分野では特に古期英語の研究に専念し,多数の古期英語,中期英語の文献を編集した。主著に,『音声学便覧』 Handbook of Phonetics (1887) ,『音声学入門』A Primer of Phonetics (92) ,『英語の音声』 The Sounds of English (1908) など音声学の著作ほか,『古英語読本』 Anglo-Saxon Reader (1876) ,『新英文法』 New English Grammar (2巻,91~98) ,『言語史』 The History of Language (1900) などがある。

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