ギョボク(英語表記)Crataeva religiosa Forst.

改訂新版 世界大百科事典 「ギョボク」の意味・わかりやすい解説

ギョボク
Crataeva religiosa Forst.

高さ10mあまりになる落葉,あるいは常緑フウチョウソウ科の熱帯樹木。葉は互生し,10cm前後の長い葉柄がある。葉身は3出複葉,小葉は卵形から長卵形で全縁,先はとがる。花は枝頂に生じた散房花序につき,大きく,開花時は白色,のち黄色をおび,直径3cmあまり。花弁は4枚,おしべも4本である。実は5~7cmもある液果で,多数の種子がある。南西諸島から広く旧世界熱帯域に分布。果実は異臭があるが食べられる。また材は軽軟でよく水に浮かぶので,漁具のうきに利用され,また台湾などでは魚形のルアーを作って釣りに利用するので,魚木の名がある。薪材,マッチの軸木,履物にも使われる。薬用としては,葉や根皮は中国で民間薬に,マレーで苦い樹皮を下剤に利用している。ギョボク以外にも,この仲間の実が食用にされるが,重要でない。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギョボク」の意味・わかりやすい解説

ギョボク
ぎょぼく / 魚木
[学] Crateva formosensis (Jacobs) B.S.Sun
Crateva adansonii DC. subsp. formosensis Jacks

フウチョウソウ科(APG分類:フウチョウボク科)の常緑高木。葉は3出複葉、互生し、葉柄は長い。小葉は卵形ないし楕円(だえん)状卵形で先は鋭くとがり、長さ5~15センチメートル、裏面は白色を帯びる。6~7月、枝の頂端に散房花序をつけ、多数の黄白色花を開く。花弁は4枚、楕円状卵形、長さ約2センチメートル。萼(がく)は4裂し卵形で先は鋭くとがり、長さ5ミリメートル。雄しべは約15本。果実は黄色の卵形で肉質の液果、径0.8~1.2センチメートル。長い柄があり下垂する。海近くの林中に生え、九州南部、沖縄、台湾に分布し、基本種はアジア、オーストラリア、アフリカの熱帯に分布する。材は柔らかく、魚の形をつくり擬似餌(ぎじえ)として魚を釣るので魚木の名がある。

[古澤潔夫 2020年11月13日]

 フウチョウソウ科の代表であったフウチョウソウ属は分子系統に基づく研究の結果、アブラナ科に近いことがわかったため、フウチョウソウ属とその近縁のものをフウチョウソウ科、それ以外のものをフウチョウボク科とすることになった。フウチョウボク科は木本で、世界の熱帯から亜熱帯に分布する。

[編集部 2020年11月13日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android